「女性だから」にとらわれず 学ぼう、自信を持とう
ダイバーシティ進化論(スプツニ子!)

私は日英の両親のもとに生まれた。両親はともに数学者。幼い頃は親の研究で日本と海外を行ったり来たりした。東京の公立小学校にも通ったが、中学、高校は日本のインターナショナルスクールやアメリカンスクールを卒業し、英インペリアル・カレッジ・ロンドン大の数学科に進んだ。
子ども時代に「場所が変わればルールも変わる」と知った。日本では小学生に「前ならえ」をさせて規律を重視するが、米国の学校はそうではなかった。私がルールや規律に「なんで?」と問いかけるようになったのは「ルールは絶対ではなく、文化によって違うもの」ということを直感的に知ったことが大きい。
やりたいことはたくさんあるのに、将来に不安があった。日本でテレビを見れば、そこにはステレオタイプの女性像があった。今から20年ほど前のことだ。女は愛嬌(あいきょう)、結婚こそ女の幸せ――メディアにあふれるこんな呪縛にやるせなさや苛(いら)立ちを感じていた。
米マサチューセッツ工科大(MIT)で助教を務め、今は日本で教えている。米国と比べ、日本はダイバーシティに関する課題はまだ多い。私が教える東京芸術大デザイン科では学生の女性比率が7割にのぼるが、つい最近まで10人の教員全員が男性で、私が初めての女性教員だった。
MITでも採用にかかわったことがある。白人男性が多いという自覚と反省のもと、マイノリティー人種や女性を先に選考していた。ゲタを履かせようという意図はなく、多様な視点がないとイノベーションが生まれない、というリアルな危機感があるのだ。
シニカルになるのはもったいない
このコラムを始めるにあたり、若い女性にメッセージを送りたい。「女性だから」と植え付けられた固定観念を解毒すべく、学ぶことに貪欲になろう。いろんな生き方があるとわかるようになり、勇気づけられるはずだ。
そして古い価値観にとらわれないようにしよう。「女性だから」家事や料理ができた方がいいなんて刷り込みから離れよう。あきらめず、自信を持つことも大事だ。「どうせ頑張っても」とシニカルになるのはもったいない。自分を低く評価してしまう「インポスター症候群」の女性は多いが、自信を持って挑戦した方が成功率も高い。
日本社会のイノベーションの源泉である女性のお役に立つことを願いつつ、コラムをつづっていきたい。

[日本経済新聞朝刊2021年5月24日付]
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