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データ収集の落とし穴

SmartTimes レランサ社長 スティーブン・ブライスタイン氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

何か決定をする時にデータが必要になることはあるが、それ以外に必要なデータなどない。私の経験から言うと、本社に提出されるデータの多くはそのほとんどが必要とされていないものだ。

米国ボストン市生まれ。戦略コンサルティング会社、レランサ(東京・千代田)の社長。国際経営学修士(MBA)とコンピューターサイエンス博士号を取得。

ある企業では在庫があったにもかかわらず、予想されていた売上高を達成していれば顧客からのオーダーを受け付けないという慣習があった。予算の正確さも業績評価指標だからというのが彼らの言い分だった。

会社の利益にどのような影響が出ようと、この営業チームにとってはダメなことだと考えられていた。売り上げ増に貢献してくれる顧客からのビジネスを断り、顧客と自社両方のビジネス機会を失った、というのは言うまでもない。

別の企業の日本支社での話もある。そこでは毎月細かい報告書を本社に提出することが義務付けられていた。このデータをまとめるのは、専門の小売りデータアナリストだったが、このポジションはしばらく空いたままだったので日本の営業部長が残業や休日出勤をして期日までにデータを準備していた。

この部長は営業担当として会社のために素晴らしい功績を上げていたのだが、このデータの準備のために健康にまで影響が出てきて、彼は会社を辞めることまで考えるようになった。

私はこの営業部長に、本社の役員に連絡をしてこのデータを要求しているのは誰かを聞き、そして本当に必要な情報は何か、それはどういった理由で必要なのかを説明してもらうようにアドバイスした。その報告書に基づいてどのような決定がされるのかというのが重要だ。本当に必要な情報は役員たちが思っているものと異なる可能性もあるので、報告書の目的についても聞かせた。

この営業部長は本社役員にそのような質問をすることさえ考えたことがなかったが、話し合いの結果、必要とされていると考えられていたデータのほとんどは、実は必要ないという結論に至った。今では彼は月に一度だけ日本ビジネスについて電話で簡潔に本社に報告し、それで十分ということとなった。

優秀なマネジャーの人たちが何か決定をする際には、彼らは常に何が一番会社のためになるか、ということを念頭においている。意味をなさなくなった古い社内の官僚主義やプロセス、決まりに立ち向かうことになっても、自分が社内でどのような立場にあろうと、それが最も重要なことであることは変わらない。

最初に挙げた予測以上の在庫販売を拒んでいた会社では、その後、営業部長が社長に直談判するところまでいき、社長はそこで初めてそのような慣習があるということを耳にして激怒したとのこと。どんどん上の人間に掛け合い続ければ、どこかで本当の利益について考えてくれている人に行きつくものだ。

[日経産業新聞2021年5月14日付]

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