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広がる音声SNS市場 既に群雄割拠、大手参入急ぐ

先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

NIKKEI MJ

今年に入って突如話題を集めた「音声SNS(交流サイト)」のトレンド。もちろん、きっかけは「クラブハウス」だ。招待制というマーケティングの手法が功を奏したのか、あるいは著名人の本音トークが聞けることに注目が集まったのか、一時期のネットかいわいはクラブハウスを巡る話題で持ちきりとなった。

ディスコードの存在感は強い=ロイター

クラブハウス自体はブームが過ぎてしまった感はあるが、それでも音声SNS市場の可能性を感じさせる材料には事欠かない。音声SNSの定義をどこまで広げるかにもよるが、なにより「ポッドキャスト」が元気だ。

ポッドキャストは、携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」を製品化したアップルが開始した「音声ブログ」ともいわれるものだ。ポッドキャスト大国の米国では、週に1回以上聴くリスナーは8000万人近くにのぼる。音声SNSでは国内勢の「Voicy(ボイシー)」も、利用者を増やしており、元気だ。

マイクロホンを内蔵した完全ワイヤレスイヤホンの出荷急増も、音声SNSの成長に拍車をかけている。2019年にアップルが「AirPods(エアーポッズ)」を投入以降、この分野が拡大。スマホと完全ワイヤレスイヤホンの組み合わせによって、どこででも「会話」や「会議」が可能になっており、クラブハウスのような気軽なおしゃべりを中心とするSNSの可能性を用意したと見られる。

スポティファイはロッカー・ルームを買収した=AP

市場の可能性は大きいと見て、大手や新興企業が参入を急いでいる。

その筆頭がツイッターだ。ツイッターは、音声チャット(会話)を新たな成長の柱と見て、昨年から「Spaces(スペース)」という同種機能の提供準備に取り組んできた。

興味深いのは最近、クラブハウスへ買収の提案をしていると報道された点だ。買収交渉は不首尾に終わったようだが、ツイッターとしては自社開発と買収の2本立ての動きで、それだけ重要な成長分野と見ている証拠だろう。

未来の有望株にはもれなく手を出すので有名なフェイスブックも、音声SNSの「ホットライン」のテスト運用を始めている。特徴は、有名人に質問を送れることで、Q&Aサービスの音声版とでもいえる点だ。ただし、動画を用いることもできるようだが。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

テーマをスポーツ中心とした音声SNSサービスを追加しようとしているのが、音楽配信サービスのスポティファイだ。最近、「ロッカー・ルーム」という音声SNS事業を買収した。スポーツファン向けに20年に開設されたSNSで、ファンらが自由にテーマを設定して、リアルタイムにおしゃべりできる。

これらの動きを見ると、まずは放送局のように、一方向で、かつ、いつでも聴くことができるポッドキャストが先行して立ち上がったのに続いて、今度は双方向で自由なおしゃべりの「場」を提供するサービスが立ち上がろうとしているのがわかる。

実はこの分野には、ライブチャットの「ディスコード」という巨人が、ゲーム実況という色彩がいまだ濃いものの、参入済みだと見ることもできる。気づけばこの分野も、群雄割拠に近づいている。大手が買収もテコにして参入を急ぐ理由はこの辺りにある。クラブハウスが独立を保つのか見通しにくい状況だ。

[日経MJ2021年5月3日付]

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