ハノイの伝統豆腐料理120円 発酵タレの強烈なにおい

ベトナムの首都ハノイを代表する名物料理の1つと言えば「ブンダウマムトム」。昼食時にオフィス街の近くにある屋台をのぞくと、地元住民やOLでにぎわっていた。価格はおかずの種類によって異なるが2万5千ドン(120円)から。数あるランチの中でもかなり安い。タレの強烈な臭いが最大の特徴だ。
ブンダウマムトムは、固形化した米麺「ブン」、揚げ豆腐「ダウ」、エビを発酵させたタレ「マムトム」の3種類が中心の料理。これらに加え、ゆでた豚肉、ハム、香菜などが皿に乗っている。人数によって皿の大きさが変わり、直箸(じかばし)でつまむ。マムトムという独特のタレにつけ小皿に取って食べる。
高さ20センチ程度のプラスチックの椅子に座り、バイクが行き交う小道でわいわいがやがや話をしながら食事をするのがハノイ流だ。新型コロナウイルスを抑え込んでいるベトナムでは昔からの光景に変わりはない。
グエン・ラン・フォンさん(58)のお店では一日300食~400食が売れるという。「安くてカロリーが少ないので、女性のお客さんが多いわよ」と話してくれた。
外国人にとって好き嫌いが分かれそうなのがタレだ。「なんじゃ、このにおいは」――。テーブルに料理が運ばれ、鼻を近づけると思わずつぶやいてしまった。箸でかき交ぜると強烈なにおいがさらに広がる。ライムを絞るとなめらかな味になると言われ試したが、イカの塩辛の味に近く、途中で食べるのを断念。代わりにベトナム伝統のタレ「ヌクマム」(魚しょう)を使い完食した。
同僚と一緒に食事をしていた会社員のドー・ティ・フエさん(40)は「外国人は苦手な人が多いけど、ベトナム人は家庭でもよく食べるので嫌いな人は少ないですよ」と教えてくれた。日本で言えば、納豆のような食べ物で食習慣の影響は大きいのかもしれない。
ベトナムは南北に長く、地域ごとに気候や文化が違う。100種類以上の魚介類の発酵食品があり、種類の多さは世界一とも言われる。強烈臭が苦手な外国人でも、やみつきになる食品が見つかるかもしれない。
(ハノイ=大西智也)
[日経MJ 2021年4月26日付]
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