つながり創出で課題解決
SmartTimes 公益資本主義推進協議会副会長 田中勇一氏
介護業界で革新的な事業を展開するGLOBAL FLAT(大阪府八尾市)。高齢者と他世代のつながりを創るため、子供向け塾やコワーキングスペース、さらにはカフェ&スナックなどを併設するサービスを企画運営する。異なる事業を併設することでサービスの多様化を生み出すのみならず、介護人材が他業種での業務経験も積めるため、多様な働き方や環境も生み出す優れた事業モデルだ。

社長の佐藤岳登さんが起業したのは2009年。個人事業主として大阪・上本町で鍼灸(しんきゅう)整骨院を開業した。スタッフ2人を雇い四苦八苦しながら事業を続ける中、人生を変える出来事が起こる。東日本大震災の被災地にボランティアでマッサージに行った時のこと。被災地の現状に大きな衝撃を受けた佐藤さんは平和の尊さを強く感じ、事業を通して世界平和を実現するため、11年11月GLOBAL FLATを設立した。
15年5月に高齢者デイサービスを営業譲渡されたことを機に鍼灸整骨院を廃業し、介護事業者としての第二の創業を決断。その後、信頼する経営者の紹介で、大久保秀夫氏(フォーバル会長)が主宰する公益資本主義推進協議会(略称PICC)の勉強会に参加。そこで、すべてのステークホルダーを幸せにする経営を徹底的に学ぶとともに、会社は社会の公器であることを知る。
公器としての会社を活かす事業を考える中、核家族化など人間関係の希薄化が進んだことで、孤独死や引きこもりなどの社会問題が増大していることに着目。事業を通して高齢者と他世代のつながりを創ることが社会問題解決の一助になると考えた佐藤さんは、17年3月にデイサービスを併設した子供向け学習塾「学研くつろぎの里教室」をオープンし、高齢者と子供がつながる場を創る。
さらに、20年1月にはシェアハウスを改装し、1階は本社機能も備えたカフェ&スナック併設のデイサービス、2階は高齢者が住める老人ホームとした。同じ年には八尾市で美容に特化したデイサービスを併設するコワーキングスペース「Bee:」を開業。美容に特化したデイサービスは関西初で、年をとってもきれいでいたい高齢者に評判となっている。ここにも起業を目指す若者や経営者と高齢者のつながりがある。
佐藤さんの課題は多様な業務に対応できるスタッフの育成。現場でのオペレーション効率化やマニュアル化をはじめ、スタッフ全員に理念研修や経営計画書作成研修を受けさせるなど様々な工夫を盛り込んだ社員教育に力を入れている。
昨年はコロナ禍の影響で一時は売り上げが激減したが、この変化を逆にチャンスととらえ事業の多角化を進めた結果、回復してきている。今後どんな新しいつながりを生み出していくのか注目したい。
[日経産業新聞2021年4月16日付]

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