ロンドンの唐揚げカレー1140円 日系バンカー支える味

英ロンドン中心部の金融街シティーで、日系金融機関の「社員食堂」として親しまれる店がある。新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)で人の流れが途切れても、一度も閉めずに営業を続けた。故郷の味を求める人の胃袋と心を満たすその味は、ロンドナー(地元民)の間でも評判となっている。
ロンドンで3店舗を展開する「ドンブリ」のセントポール店。カレーやラーメン、うどん、牛丼と、日本人にとっては定番のメニューが並ぶ。オーナーは日本人で、味も独自のレシピにこだわる本格派だ。店内で食べるスペースもあるが、都市封鎖中はテークアウトのみで営業している。
1番人気は「唐揚げチキンカレー」で7.6ポンド(約1140円)。そのほかに牛丼7.6ポンド、うどんとラーメンがそれぞれ8.6ポンドなど。日本円に換算すると安くはないが、ランチで10ポンド以上が当たり前のロンドン中心部にあって、良心的な価格設定と言える。
英国はこれまでに12万人超と新型コロナで欧州最多の死者を出し、断続的に都市封鎖が敷かれている。在宅勤務が基本となり、シティーから人の姿が消えた。多くの飲食店はシャッターを閉めたが、ドンブリは違った。
「絶対に閉めません!」。ロンドンが2度目の都市封鎖に入った2020年11月、ドンブリは店頭の窓ガラスにこんなメッセージを書いた。「意地みたいなもんですね」。ショップマネジャーの荻島康仁さん(44)は当時、こう話していた。
ドンブリは日系金融機関のバンカーたちを陰で支えてきた。システムの制約で在宅ではできない仕事があり、都市封鎖の中でも一部の人は交代で出社していた。ある大手銀行に勤める男性(37)は「定番の丼やダシのきいたうどんは現地スタッフにも人気。開いていて本当に助かった」と話す。
都市封鎖中の売り上げはコロナ前の8割減。政府の支援策を活用したほか、コストを切り詰めてなんとかやりくりしているという。「日系企業の方、地元の人、学生さん。お客さんがいる限り店を開けます」と荻島さん。街ににぎわいが戻る日まで営業を続ける。
(ロンドン=佐竹実)
[日経MJ 2021年4月11日付]
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