/

昆虫食ブーム支えるクラファン ストーリーで共感集める理想形

奔流eビジネス (通販コンサルタント 村山らむね氏)

NIKKEI MJ

日本でも代替食のブームの兆しがあるようだ。食関連の勉強会などで、サステナブルな食とはと議論することも多くなってきた。ニッチな食に関するベンチャーも、資金集めや宣伝ではクラウドファンディングが、収益の多重化ではeコマースがそれぞれ大きな役割を果たし、従来よりは立ち上げやすく、また、継続しやすくなったと思われる。

味と物語の良さがアントシカダの人気につながっている

そんななか、「コオロギラーメン」が話題のアントシカダ(東京・日本橋馬喰町)にお邪魔した。オーナーの篠原祐太さんは幼い頃から昆虫食に興味を持ち、慶応大学在学中に「今まで食べられないと思われたものを食べる楽しさを提供したい」と起業を決意した。

レストランの開業を目指し資金のめどが立ったところで、集客や宣伝も兼ねクラウドファンディングを開始。300万円の目標が5日で達成され、最終的には689万円が集まった。2020年6月オープンした。

昆虫食ということで多少ゲテモノ扱いされることもあったが、風向きを大きく変えたのが、「無印良品」が徳島大学との協業の成果により「コオロギせんべい」を発売したこと。世間の昆虫食への関心が高まったという。

篠原さんの取り組みで感心したのが、2つの点だ。まず、スタッフ。実はスタッフはほとんど昆虫食に興味がなかった。「昆虫に興味がない彼らが、おいしいというものでなければ広まらない。だからこそ、食に関して熱意のある人に携わってもらっている」

2つ目は様々なコラボレーション。特にお酒の分野では、コオロギビールが遠野醸造(現在は所沢ビール)、タガメのジンは岐阜の辰巳蒸留所、蚕沙(蚕のフン)のブランデーは千葉のmitosaya薬草園蒸留所と、お酒好きにはたまらない知る人ぞ知る醸造所・蒸留所と、コラボしている。(全部試飲したが、本当においしい!)

現在、金・土曜日は完全予約制で、10品のフルコースを1万1000円(ドリンクペアリング込み)で提供。昆虫だけでなく、ジビエや野草など「これも食べられるんだ」という驚きもあり、オープン後しばらくは予約が取りにくいほどの盛況だったそうだ。

むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。

日曜日は、コオロギラーメンを提供。こちらも行列ができる人気だ。お客さんにインタビューしたところ、毎月訪れているという常連さんも複数いて、「毎回来るごとに新しい食の体験ができるのでわくわくする」と話していた。

月曜日はラーメンなどネットショップの発送をしている。クラウドファンディングで関心を集め店舗をオープンし、コロナ禍ではネットショップでも売り上げる。ストーリーという太い幹で共感を集めており、理想的な運営だ。

サステナブルな食だからといって、おいしくなければ絶対に食べるのは無理。アントシカダが人気を得ているのは、アタマで味わう物語と、シタで味わうおいしさのバランスの良さ。知覚と味覚が両立してこその、食のニューウェーブと、改めて思った。

ところで、どれだけ「コオロギラーメン」と「タガメのジン」がおいしかったと力説しても、家族には「黙って」としか言われない。ムシされてばかりである。

[日経MJ2021年4月9日付]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

日経MJ

創刊50周年を迎えたマーケティングの専門紙「日経MJ」のコンテンツをまとめてお読みいただけます。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン