東大→外資が2度リストラに 子育てでの悩みを事業に
シェアダイン共同代表 井出有希さん(折れないキャリア)
シェアダイン(東京・港)はプロの料理人や管理栄養士を自宅に呼び、食事を作り置きしてもらうサービスで注目を集める。ゴールドマン・サックス証券勤務など経歴は一見華々しいが、2度もリストラされてもがいた経験がある。子育てでぶつかった壁を事業につなげた。

「実力があれば女性も大きな仕事を任される」。そんな期待を抱き、2000年ゴールドマンに入社した。だが、配属先の投資調査部では次々と降ってくる仕事をこなすので精いっぱい。「辞めたい」と上司に申し出るほどだった。リーマン・ショック後の09年、ついにリストラにあう。ショックを受けたが、自分の実力不足だと納得もした。
2社目は顧客だった外資系投資顧問会社だ。前職の企業分析の経験を生かして頭角を現し、顧客の信頼を得た。充実したキャリアを築きつつあったが、米本社の方針で日本法人が閉鎖され、2度目のリストラにあう。結婚し「次は子供」とライフプランを描けるようになったころだった。計画が狂い、悔しさがわいた。
転職活動は厳しかったが次は金融にこだわらず、子育てとの両立に理解があるボストン・コンサルティング・グループに入った。念願の第1子を授かったが、またもや予想しなかった悩みに直面する。
子供の偏食だ。自分は季節を感じられる豊かな食生活を送ってきたのに、子供は唐揚げ以外はほぼ受け付けない。食べられるものをスーパーで買って並べる食卓に「これでいいのか」と自問し、沈む日々が続いた。
転機は16年にやってきた。第2子の育児休業からの復帰直前、同僚の飯田陽狩さんから「食事の悩みを解決するサービスをビジネスにしたい」と切り出された。一旦保留したが「食の悩みを抱える人はきっと多い。社会の課題を解決できる」と気持ちが膨らんだ。「海外では失敗するほど信用がつきお金を借りられる」。夫の言葉にも背中を押されて飯田さんらと合流。会社を立ち上げた。
ターゲットは子育て世代だけではない。あらゆる人に専門家の力を借りて食の悩みを解決してほしいと願う。社会人として、母として曲折がなければ今の道にはつながらなかった。挫折も糧にした今「諦めず前を向けばチャンスは巡ってくる」と実感している。
(聞き手は浜美佐)
[日本経済新聞朝刊2021年3月29日付]
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