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加工しすぎはもう飽きた? 盛らない写真アプリ人気に

奔流eビジネス (アジャイルメディア・ネットワークアンバサダー 徳力基彦氏)

NIKKEI MJ

Dispoという写真共有アプリを聞いたことがあるだろうか。2月に日本でも大きな話題になった音声SNSサービスの「クラブハウス」に続き、注目されている写真共有サービスだ。

写真を「盛らない」アプリにも人気が集まる(Sipa/AP)

おもしろいのがスマホアプリが昔大流行した富士フイルムのレンズ付きフィルム「写ルンです」をほうふつとさせる画面になっており、撮影した写真が従来のフィルムカメラと同じように、「現像」されるまで確認することができない。

つまりDispoで撮影した写真は、その場で確認することも、撮影した写真を加工することもできないということ。シャッターボタンを押した画角のまま公開され、そのままの写真が他のユーザーに表示される仕組みになっている。

写真共有サービスの代表格であるインスタグラムでは、「インスタ映え」という言葉に代表されるように、映えることが重視されている。こうした様々な加工が可能なことを重視するユーザーが多いのに対し、Dispoは逆行した流れともいえる。

「ディープフェイク」という、AIによって有名人の発言を合成した動画を作ることができる技術が話題になったように、加工技術が発達したことで写真も動画も大幅に加工することが可能になった。逆にその加工技術にうんざりした人が増えていることが、Dispoのような加工ができないサービスが注目される背景にありそうだ。

そういう視点で振り返るとクラブハウスも、生の会話に注力しているサービスで、基本的には加工ができない。クラブハウスの中のインスタグラマーの間でも、インスタグラムであれば写真を加工して「盛る」ことができるが、クラブハウスの会話はリアルタイムでのアドリブが求められるため「盛れない」という議論になっていた。

ユーチューブで話題の「ザ ファースト テイク」というチャンネルも、アーティストが一発撮りで歌を披露しており、プロならではの高い技術を生々しく味わえることで注目されている。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

多くのアーティストが登場し、チャンネル全体の再生数はなんと9億回を超えているそうだ。鬼滅の刃の主題歌としてもおなじみのLiSAの紅蓮華などは、1本の再生回数が1億を超えているから、人気のほどが良く分かるといえよう。

フェイスブックやツイッターの広告においても、プロが広告のためにとったきれいすぎる写真よりも、ユーザーが撮影してSNSに投稿した素人の写真の方が、広告効果が結果的に高くなるケースが多々あるそうだ。

一連の事例はあくまで個別のケースではある。だが一連のトレンドを俯瞰(ふかん)して考えると、加工しすぎた世界に飽きてしまった人が増えてきている可能性は高い。

ソーシャルメディアの普及により、企業のウソはすぐにバレる時代になったとも言われるが、加工のしすぎもバレる時代になっていると言えるだろう。

これからは企業のコミュニケーションにも等身大の姿勢が求められる時代になってくるのかもしれない。

[日経MJ2021年3月26日付]

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