ブラジル、日本風カツカレー1180円 次のブーム期待

日本の国民食であるカレーがブラジルでひそかな盛り上がりをみせている。新型コロナ禍での巣ごもり需要を捉えて関連商品の売り上げが急伸しており、すしやラーメンに続く日本食として定着するか、注目が集まる。
サンパウロを代表する和食店「Tempura Ten(天ぷら・天)」。同店のランチの人気メニューの一つが、カツカレー(60レアル、約1180円)だ。かつては日本の味を懐かしむ駐在員や移住者が求めるものという位置づけだった日本風カレー。それが現在ではブラジル人からも注目される日本食となった。
日系人が多く住むブラジルはもともと和食店が多数あり、すしなどの料理はローカル化して広く愛されている。近年はラーメンも新たなブームを巻き起こし、日本風カレーは「次」のトレンドとして期待がかかる。
日本貿易振興機構(ジェトロ)は1月、カレーの消費を促進するイベント「カレーウイーク」を実施。ブラジル国内にある飲食店や小売店100店舗以上と協力し、カレーの魅力を通じた日本食材の普及に取り組んだ。
狙いは成功し、カレーウイークをきっかけに、わずか1週間で目標の4倍以上となる4万食以上のカレーのルーを販売した。日本食材を取り扱う小売店の数は80店舗から150店舗に増えた。
ジェトロ・サンパウロ事務所の斎藤裕之ディレクターは「もともと主食であるコメの上に食べ物をかける文化があり、カレーと親和性がある」と分析する。また、1年近く続くコロナ禍での外出制限に伴い、新たな刺激を求めるブラジル人のニーズと一致したという。
普及に向けた課題は価格だ。飲食店での販売価格はおおむね「ビッグマック」セットの1.5倍程度となり、誰にでも手が出る水準ではない。通貨安で輸入品の物価が高止まりするなか、ルーなど原材料費の値下がりにも期待はできない。
トレンドの感度が高い人や物珍しさで手を出した人たちにリピーターとして定着してもらい、何度も食べたいと思わせることができるかどうか。日本食材の海外での販路拡大を試す上で、1つの試金石となりそうだ。
(サンパウロ=外山尚之)
[日経MJ 2021年3月22日付]
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