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「スマートロック」でスマホが鍵に Suica「どこでも入り口」実証

奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)

NIKKEI MJ

普及率が高まったことで、スマホなしの生活が考えられない人も多いと思う。肌身離さず持ち歩くであろうスマホを、ドアの鍵にしてしまうのがスマートロックだ。

Suicaを鍵にできれば、駅の改札のように様々な場所が入り口になる

スマートロックには通常の鍵にはない様々な利便性があるため、着実な広がりを見せている。例えば通常の鍵は、同じドアを使う人のために物理的な鍵のコピーを作る必要がある。スマートロックは社員全員にオンラインで鍵を発行することもできるし、特定の時間にしか使えない鍵も発行できるため、1週間だけのアルバイト用の鍵を発行するなど柔軟な運用が可能だ。誰が何時に出入りしたかのログも取ることができ、多くの人が出入りする場所のセキュリティ管理にも便利だ。

こうした利便性をさらに広げる実験がスタートした。

多くの企業にスマートロックを提供するベンチャーのフォトシンスが、JR東日本スタートアップと組んでSuicaとオフィスビルの入退館を連携させる実験を始めた。SuicaのIDを活用することで事前にネットで来館受付でき、受付で記入したり、紙の入館証を発行したりなどは必要なくなる。当日は自分のSuicaをかざすだけで入館が可能になる。

すでに多くの発行実績があるSuicaを鍵にできれば、駅の改札のように様々な場所が入り口になる。図書館や公園など公共の場にもスマートロックのゲートを設置することで、認証された人だけの空間をたくさん作ることもできる。子供が安心して遊べる公園や市民の共同倉庫なども、簡単に作ることができるようになるだろう。

フォトシンスは鍵大手の美和ロックとも合弁会社を設立し、個人の家のスマートロック化を推進している。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

米国ではアマゾンがアマゾンキーというサービスを提供している。不在時でも配達員が一時的に鍵を開け、配達の荷物を家の中に置いて帰ることができるため、不在配達を減らせるサービスだ。勝手に鍵を開けられることに不安を持つ人向けには、カメラを同時に設置することで安心感を提供する。犬の散歩や掃除代行など、スマートロックにすることで留守中でも様々な自宅向けサービスが提供可能になる。普通の住宅の時間単位での貸し出しや、サービスアパートメント化の流れもどんどん増えていくだろう。

フォトシンスの注目ポイントは大企業との連携のうまさにある。日本ではスピード感をもってイノベーションな挑戦が生み出せない大企業が多い。スタートアップの力を借りるためのオープンイノベーションという名目で、様々な取り組みが行われてきたが、なかなか成果が出にくい。

一方でスタートアップも、物理的なハードウエアや社会インフラに関わるサービスを広げていくには体力に限界がある。フォトシンスの河瀬航大社長は「スタートアップの青写真を押しつけてもうまくいかない。大企業が何を生み出したいのか。日本ではスタートアップから寄り添っていく姿勢が大事だ」と話す。ベンチャーと大手インフラや老舗がしっかりと組み、キーレス社会を目指すこうしたアプローチは、今後の大企業とベンチャーにとっても良いモデルケースとなるのではないだろうか。

[日経MJ2021年3月5日付]

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