中国、白酒に専用の開弁器300円 人気ゆえの偽装対策

中国の伝統蒸留酒「白酒」の出荷が伸びている。消費が復調しつつあるほか、人気ブランドは転売で差益が期待できるため実需を超えた投機市場が出来上がっている。最大手、貴州茅台酒の代表商品「飛天」は正規販売価格の1499元(約2万4千円)に数百元上乗せした値で取引されるほどだ。人気急騰は偽造品の流通を招き、メーカーは対策に追われている。
貴州茅台酒が1月上旬に発表した2020年の業績見通しは、営業総収入が977億元(約1兆5千億円)と19年比10%増え、純利益も10%増の455億元だった。絶好調の業績だが、その裏側で頭を悩ませる事態も起きている。
貴州省の地方裁判所は20年12月、飛天の偽造品を2万7千本造ったとして13人に有罪判決を言い渡した。主犯格は5年半年の懲役刑だった。高級白酒が資産のように扱われる中国ではこうした偽造や模造が後を絶たない。手法は瓶やパッケージを偽装したり、正規品の瓶の中身を詰め替えたりと様々だ。
とりわけ高いブランド力を誇る貴州茅台酒はあらゆる対策を講じてきた。例えば瓶の口に取り付ける樹脂製の「弁」だ。樹脂製の部品で、液体は中から外へ出るが、外から中へはほとんど入らない。詰め替えによる偽造を防ぐ効果がある。
ただ、この弁にはデメリットもある。瓶内の量が少なくなると酒が途端に出にくくなり、最後の数ミリリットルが中に残ってしまうのだ。わずか数ミリリットルでも白酒の小さなグラスなら1杯分はとれてしまう。
そこで登場したのが弁を外す道具「開弁器」だ。価格は日本円で300円程度。栓抜きのように弁を取り外して中に残った酒を出せる。外す際に弁の縁が変形するため、再利用は難しいという。
従来、足で瓶を踏みつけるなど力技で弁を外そうとして瓶そのものを割ってしまう人が続出したこともあり、開弁器は電子商取引(EC)サイトで売れ筋となった。その多くが貴州茅台酒、飛天の「専用品」をうたっており、他社の白酒向けとされる商品はほぼない。飛天の群を抜く人気を象徴する品といえそうだ。
(広州=比奈田悠佑)
[日経MJ 2021年3月1日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。