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社会人基礎力を磨く

SmartTimes iU情報経営イノベーション専門職大学教授 久米信行氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

職場や地域社会で仕事をしていくために必要な力を社会人基礎力という。2006年に経済産業省が提唱し、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力から構成されている。

私はかつて大学対抗の社会人基礎力育成グランプリで審査員を務めたことがあるが、当初は若者に必要な力とみられていた。しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)が不連続の変革を起こし、過去の成功法則が通用しなくなる中、むしろ私のような中高年にこそ社会人基礎力が必要なのではないだろうか。

最先端のICTスキルからビジネスモデルまで、過去の知見を自ら全否定して新しく学び直すには「前に踏み出す力」が不可欠だ。新技術を学ぶ新たな師匠は、多くの場合、自分より年下になろう。年長者のプライドを捨てて、前に踏み出さねばならない。これから10年はマニュアル無き試行錯誤の時代となる。しかもルーティンワークは人工知能(AI)やロボットに取って代わられる。自らの存在意義を示すには、目の肥えた顧客の感性に訴える独創的な商品やサービスを「考え抜く力」が求められるのだ。前例主義者やただ上司に従順な思考停止の調整役は不要になってしまう。

チームワークの形態も大きく変わる。企業や国境の壁を越え、多様な才能を集める場合、社内での政治力や自社だけのルールは通用しない。しかもテレワークでメンバーのやる気と知恵を引き出しつつ、品質と納期も守ることも欠かせない。これは今までにない新しい「チームで働く力」なのだ。私も自己改革が必要だと自覚し、前に踏み出した。2年後の還暦にはゼロリセットする覚悟で今から準備を進めている。

起業家を育てる新大学iUで教員となったのも、教えつつ学べる新しい職場を選んだからだ。時に私より若い異能の教員たちと切磋琢磨(せっさたくま)し協働して新しい教育システムを創る。学生たちの斬新なアイデアを形にしていく。そこにはマニュアルがなく試行錯誤の連続だ。開学直後にコロナ禍でオンライン授業を迫られたことは厳しい試練だが、これもまた一つの学びの機会だ。

いよいよ、学生たちのインターンや提携企業との共同プロジェクトが始まる。学生の社会人基礎力を高めつつ、私自身の力も試されることとなる。重要なのは、未来のユーザーたる学生たちが望む新しい感性とライフスタイルを、拒絶も否定もせずに受け入れる力だ。

その実現のためにiUの提携企業が持つものづくりの技術や斬新なサービスを独創的に組み合わせる力もいる。そして、それを異能のチームで実行する力も欠かせない。この年にして手厳しい失敗も味わうこともあろう。それでもめげずに人生百年時代の社会人基礎力を磨き続けたい。

[日経産業新聞2021年2月26日付]

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