クラブハウス沸く インスタ疲れ?気軽さ人気
ミレニアルスタイル
米国発の音声版SNS「Clubhouse(クラブハウス)」が話題を呼んでいる。早速ミレニアルズに聞いてみると、彼らの間で最も盛り上がったのは、1月28日からの3日間だった。

「LINEリサーチ」が1月末と1週間後に実施した調査によると、クラブハウスの認知率が1月末では20代が34%、30代が18%で上世代より高く、1週間後にはそれぞれ64%と48%に伸びている。
27歳女性の場合、1月27日夜、「インスタグラム」で出版系やIT系の情報通が「始めた」と投稿しているのを流し見。28日朝、音楽業界の友人から招待されたというIT系の友人から招待され、登録。夕方にはアカウントを「インスタ」の「ストーリーズ」で紹介し、フォロワーを募る。夜、友人5~6人から「クラブハウスに入りたいから招待して!」と懇願される。
こうして次々とSNSに「#clubhouse」付きの投稿が続き「怒涛(どとう)の3日間」で急速に広まった。
注目すべきはスピード感。ミレニアルズのSNS投稿による波及力は大きい。「普段からSNSに熱心で、情報感度が高いと思っている人ほど、早くやらなきゃ! と必死になっていた」(26歳)
早く招待されると優越感と情報感度の格付けが上がった気分になる。ストーリーズでは「よく分からないけど、招待が来たから始めた」という反応が最も多く、登録だけで満足した人もいる。
既に多数のコミュニティルームが乱立し、まさにカオス状態のクラブハウスだが、おしゃべり好きにはたまらない場だ。
31歳港区女子は「めっちゃ楽しい! 好きな時に話せるからリモートでのさみしさを紛らわせるのに良き!」とトークルームを愛用。「お昼休みも使い、クラブハウス沼にはまってます」という。新しい友達作りや出会い願望の人たちは「友達の友達や、普段出会うことがないハイスペックな人たちともつながれる」と喜ぶ。
一方で、「仕事の延長線上で使う人が多く、プレゼンみたいで居心地悪い」(28歳男性)との声も。
クラブハウスの黎明(れいめい)期に参画して楽しみたいと「7日間毎日配信し、トーク力だけでどこまで人を魅了できるのかを試したらファンが700人以上ついた」(32歳男性)人もいる。
盛り上がりの背景には、招待制という限定感に加え、「最近インスタに写真を投稿しなくなり、盛り下がっていた」(27歳女性)という事情もある。インスタのフィード投稿が減ったのは、コロナによる外出自粛で写真を撮る機会が減った影響もあるが、レベルの高い画像にこだわるあまり、ハードルが上がったこともあるという。
クラブハウスは、そんなミレニアルズたちの気軽なコミュニケーションの発散の場としてうまく既存のSNSを補完する。その意味では、音声配信アプリの老舗的存在、「podcast」の人気が一部で再燃していることも関係がありそうだ。最近ではミレニアル女子2人の雑談「ゆとりっ娘たちのたわごと」「アラサー女子の人間観察」などが共感を呼ぶ。
コロナの閉塞感の中でも、多様に変化するインターネットコミュニケーションの世界を、ミレニアルズたちは貪欲に泳いでいる。
(ブームプランニング代表 中村泰子)
[日経MJ2021年2月19日付]