伊集院静「ミチクサ先生」(247)
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「なぜ断るんだね?」
「その推挙には、"満二年間英国留学中英語授業法ノ取調を嘱託ス"とあります。わざわざ英国へ行くなら英文学の研究を希望します。元々、この学校へもそれを願って赴任したのですから」
「まあ君、それはむこうへ行ってから、そうすりゃいいじゃないか」
――えっ、そんな緩(ゆる)いことでいいのか?
東京の子規に報告すると、"さすが予備門同級の折からの漱石先生の秀才ぶり(ちと持ち上げ過ぎじゃが)が文部...
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