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音声SNSの絶妙な距離感 失われた雑談の場の代わりに

奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)

NIKKEI MJ

米国の「Clubhouse(クラブハウス)」という音声SNSアプリが日本で話題となっている。色々なテーマのルームを自分が作って友人を招待したり、興味あるルームに参加して会話したりという仕組みだが、あっという間に著名人やユーチューバー、芸能人までもが様々なルームでトークを朝から晩まで繰り広げている。

クラブハウスは気軽に参加し、立ち去れるのも魅力(写真に掲載されている参加者には筆者が許諾を得ている)

若い世代にはピンとこないかもしれないが、かつて日本には、電話を利用した情報提供サービスが存在し、複数の人が音声で参加する仕組みが大流行した。電話によるコミュニケーションが普通だった時代は声は人と会う手段の代替で、声だけでも見知らぬ人と出会い、コミュニケーションが楽しめることは、すでに30年前に証明されていたとも言える。

しかし時は流れ、現在はスマホをベースとしたテキストと映像コミュニケーションの全盛期だ。音声はコミュニケーションの傍流になり、突然人の時間に割り込む電話はどちらかというと嫌われる存在にもなっていた。

そんな時に突然訪れたコロナ禍はリアルな人との交流や出会い、立ち話、雑談を我々から奪い去った。会議システムを使った「ズーム飲み」なども生まれたが、やはり映像は服装や化粧なども気をつかう。テキストでは人のぬくもりが感じられないし、すぐに仲良くはなれない。そんな中での音声はちょうどよい距離感を生み出す。米国でも日本でもコロナ禍が音声復興にマッチしたとも言えるだろう。

音声を活用した発信者中心の音声メディアは、ここ数年徐々に盛り上がりを示していたのも事実だ。しかし今回ブレークしたクラブハウスの特徴は録音はなくリアルタイムだけのため、聞くというより参加する感覚だ。まるで井戸端会議や立食パーティーのようにふらりと輪に加わって会話を聞いたり、すぐ立ち去ったりしても違和感がない圧倒的な心地よさがある。

オンラインイベントの多くは事前申し込みが必要で気軽ではなく、スピーカーとのやりとりが中心で参加者同士のつながりがほとんどない。テレビのザッピングのように面白そうなものを次々とのぞける気軽さと、たまたま参加したルームで生まれる偶然の出会いは、在宅時間が圧倒的に増えた今日では喪失された価値そのものと言えるだろう。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

音声メディアを後押しする要因としてワイヤレスイヤホンの普及もある。部屋や町を歩きながら、他の作業をしながらでも自由に会話をすることが容易で、画面をずっと見なければならない制約から解き放たれることも大きい。

今後は生活の中での音声活用シーンが増えることが予想される。AIエージェントの機能も進化すれば、音声会話の延長で様々なデバイスなどへの操作を指示することも増えるだろう。イヤホンをする人が増えれば、店舗の買い物時に質問したり、料理を音声で注文できたりするサービスも登場するかもしれない。

ツイッターもすでにクラブハウスの競合となる音声SNSサービスのテストをスタートさせている。他のプレーヤーも虎視眈々(こしたんたん)と音声分野での新しいサービスの開発を狙っていることは間違いないだろう。

[日経MJ2021年2月5日付]

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