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「シリコンバレー離れ」は大げさ

新風シリコンバレー 米インタートラストテクノロジーズマネジャー フィル・キーズ氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 新風シリコンバレー

2020年12月、米シリコンバレーから有力企業が本社を移転するニュースが相次いだ。この地を象徴する企業である米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)はテキサス州ヒューストン市に本社を移すという。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

HPEの源流であるヒューレット・パッカード(HP)はかつて、ヒューストン近郊にあった旧コンパックを買収していただけに、シリコンバレーの歴史を知っている人々の間では皮肉を感じた。その直後、米テスラやデータベース大手のオラクルもテキサス州に引っ越すニュースが流れた。

この移動の理由にいくつかの解説がされている。まず、コロナ禍で企業や社員も家から仕事をすることに慣れた。税金が低いテキサス州への引っ越しをしても、企業の運営に大きな影響はないと判断した。

ところで、米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、テキサス州の法人税よりも所得税の低さが魅力的だと書かれていたため、企業の経営より幹部がうれしかった可能性がある。そしてシリコンバレーの高い生活費や道路渋滞だ。

相次ぐテキサス移転で、シリコンバレーのビジネス環境は危機に向かっているという印象を受ける。シリコンバレーが幾つのチャレンジに向かっているのは事実だが、筆者は多数の企業がシリコンバレーから離れると思っていない。その理由は、東京を事例として見れば理解できるだろう。

長い間、東京の生活環境は批判されている。通勤電車や道路渋滞、自宅が狭い、どこに行っても人が多すぎるという苦情をよく聞く。地方から東京に来た人が地方に戻る「Uターン」の記事も珍しくない。東京で日本の政治や経済力が異常に集積されているのは明らかだが、東京の「分解」はまだ実行されていない。

この現象の背景には色々な理由があるだろうが、東京のビジネスや政策、文化の蓄積には様々な便益がある。やはり、電車に乗れば、多数の人々と会えることが、地方で実現できない。

シリコンバレーはテクノロジー業界の「東京」だと考えられる。テクノロジー業界の知識がある技術者や経営者、投資家などの人々が集まる便利さは、他の地方ですぐに実現は難しい。コロナ禍でシリコンバレーの仕事環境は今後も変わっていく。危機が終わっても同じオフィスで仕事をする習慣は終わるだろう。

しかし、人間同士のコミュニケーションは現実的に同じ場所にいることが最も効率的だ。会議のため、飛行機で頻繁にシリコンバレーに旅ができる人物以外は、今後も多くの社員は必要な時にいつも同じ場所に集まれる距離にいるだろう。

シリコンバレーの商業不動産業界でも筆者と同じ考えがあるらしい。コロナ禍でも、新しいオフィスビルの建築が続き、ビル取引のニュースも頻繁だ。例えば、米アルファベット傘下のウェイモが20年12月、約16万平方メートルのビルをシリコンバレーで借りた。こうしたお金の流れを見て、シリコンバレーはまだ終わっていないと思う。

[日経産業新聞2021年2月2日付]

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