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ヒトの噂話と組織運営

SmartTimes WAmazing代表取締役社長CEO 加藤史子氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

「クマだってアリだっていろんな種があるのに…。どうしてヒトはサピエンスしかいないんだろう。すごく不思議だ、うさんくさいと言ってもいい。自分たちが唯一のヒトだなんて」。「サピエンス全史(ユヴァル・ノア・ハラリ著)」はこんな問いかけから始まる。年末年始ぐらいは普段の仕事とは関係のない書籍をと思い読んでみた。

興味をそそられ検索して調べると確かに世界には8種のクマがいる。アリに至っては名前が確認されているものだけでも1万5千種類以上いるそうだ。しかしヒトは現在、ホモ・サピエンス1種類。ただ5万年前までは少なくとも6種類はいた。なぜ、我々サピエンス以外が絶滅したのかは大きな謎である。逆になぜ、サピエンスだけが生き残ったのか。そして、地球上に70億人以上にまで人口が増えたのか。その要因は、7万年前に起こった「認知革命」だと言われている。

特にコミュニケーション能力と大勢で共同作業をする能力が他の動物より圧倒的に秀でたそうだ。もちろん他の生き物もコミュニケーションをとる。アリもハチも何千匹で協力体制を築く。アリはおしりから化学物質を出して餌までの道を教えるし、ミツバチはダンスして花畑の場所を教える。狼やチンパンジーも協力しあうが、血縁関係のある身内や良く知る仲間うちとしか協力することができない。それは我々のように噂話をするのが得意ではないからだそうだ。

人間のコミュニケーションは、ほかの動物たちのように食べ物のありかや敵への注意喚起をするよりも、私たち自身に関することのほうが多い。サラリーマンたちが同僚との飲み会で酒のさかなにするのは、大部分が飲み会にいない人の噂話か会社の人事について、ということが多いらしい。私たちは大勢で協力しあう生き物だから、誰が誰を嫌っているとか、誰が正直で、誰が不誠実かといった情報が大切なのだ。ただ噂話にも限りがあり、無数の人間と親しく付き合うことはできない。

スタートアップ経営者の間では「成長の壁」がよく議論のテーマにあがる。スタートアップは急激に陣容を拡大することが多く、会社の構成員が30人、50人、そして100人を超える度に組織内コミュニケーションがうまくいかずに組織崩壊の危機に遭遇するというものだ。これは経営陣と従業員が相互に緊密なコミュニケーションができなくなることが原因だ。今はリモートワークが推奨され一緒にランチを食べることも飲み会もなくなった。しかし、重要な情報は雑談と噂話の中にある。オンライン会議では、どうしても「食べ物のありか、敵への注意喚起」に終始してしまう。たまには仕事に関係のない読書をと思ったが、結局、コロナ禍下での組織運営について思いを馳せることとなった。

[日経産業新聞2021年1月29日付]

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