伊集院静「ミチクサ先生」(229)
[有料会員限定]
小天(おあま)から戻ってしばらくして、前田家からミカンと乾椎茸(しいたけ)が届いた。
二月の紀元節は熊本も珍しく雪が降った。その雪を見ながら、金之助は新聞『日本』紙上に正岡子規が発表した『歌よみに与ふる書』を読んでいた。短歌革新運動を子規は唱えていた。
「いよいよ、おっぱじめやがったな、大将」
子規の文章は、近年の和歌すなわち短歌が置かれた現状を憂い、このままでは我が国の伝統が衰退していくと鋭く論じ...
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。
残り615文字