辻惟雄(21)結婚
スナップ写真がきっかけ 円満な夫婦生活、薄給には驚き
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曽我蕭白について調べている時期と前後して、ヨットで太平洋を乗り回すアメリカの変わった資産家の御曹司が日本にやってきて、京都や東京の古美術商を回って伊藤若冲の絵を熱心に探しているとの噂を耳にした。
浮世絵をはじめ江戸絵画の逸品の海外流出は私たち日本美術の研究者には胸の痛む事態である。気をもんでいるうちに、若冲の作品2点を買う契約を東京の古美術商と結んだと聞いて慌てて店を探し当てた。絵が海を渡る前に...
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美術史家の辻惟雄さんは江戸絵画史の研究に新風を吹き込み、伊藤若冲らを「奇想の画家」という視点から紹介し、一大ブームを作りました。岐阜の産婦人科医の次男として医師になるべく東大に入ったものの、医学部での学業を断念し文学部に進みました。挫折の連続だったという辻さんが美術史でいかに独自の世界を築いたか、知られざるエピソードを交えながら明かします。