ビーフより美味? 代替肉のハンバーガー、東京・池袋

大豆など植物由来の材料などで作る代替肉が世界的に注目されている。海外では米国のビヨンドミートやインポッシブル・フーズなどの躍進が目立つ。日本では、英蘭ユニリーバ傘下のベジタリアンブッチャーから日本での専売権を得たベジタリアンブッチャージャパン(東京・豊島)が2020年8月から、池袋で代替肉のバーガーショップを運営している。
主力のハンバーガーは2種類ある。大豆や卵、牛乳を使用した牛肉風のビーフバーガーと、動物由来の食材を全く使用しないヴィーガン(完全菜食主義者)対応のチキンバーガーがある。価格は税別1080円だ。
まずビーフバーガーを試したが、見た目は手作り感のあるグルメバーガーと変わらない。パテは180グラム。みずみずしいレタスやトマト、タマネギが具材として入り、かぶりつくとビーフ100%のハンバーガーのような食感と香ばしい風味があり、まったく違和感はない。
もっと大豆臭いかと思ったが、そんなことはない。植物由来ということで、物足りなさを感じるかと思ったが、十分満足できた。味も申し分ない。
通常のハンバーガーとの違いは、食後の胃もたれ感だ。筆者は中年ということもあり、肉類をしっかり食べると、食後に胃もたれを感じ、年々ひどくなるのが悩みだ。代替肉はそれがないような気がする。
同店では、代替肉を店頭で販売している。ビーフ風パテ、チキン風パテのほかに、植物由来のツナ(ホワイトミート)、ソーセージ、ナゲットなどを精肉店のように販売している。価格はどれも100グラムあたり200円。一通り購入して自宅で調理して試食したところ、植物由来ながらも肉のような食感を出す工夫が感じられた。
チキン風パテはオレガノなどハーブがしっかり入っており、単体で鶏肉の味に近づけるより、鶏肉料理をイメージして味が設計されている。肉を使わない「ロコモコ丼」や「チキンカツ」など家庭でアレンジして楽しめそうだ。
ベジタリアンブッチャージャパンの村谷幸彦社長によると「お客様の7割を女性が占め、遠方からの来店客もいます。日本での代替肉市場の拡大に手応えを感じています」と話す。

今後の展開について聞くと「主流は代替肉の流通がメインです。個人向けには通販サイトで販売します。多店舗化は考えず、池袋の店舗はショールーム的な存在です」とのこと。ちなみに「ベジタリアンブッチャー」を冠したバーガーショップは取材時点では世界中で池袋店のみ。コロナ禍にオープンしたこともあり、本来のパフォーマンスは未知数だが、56平方メートルの店舗で月商は約600万円。口コミなどによる集客と宅配により売り上げは右肩上がりという。
植物由来の代替肉と聞いて「おいしそう」とイメージをする人はまだ少ないだろう。しかし一度食べると印象は変わりそうだ。それだけに、外食だけでなく素材の販売も行うことで、代替肉の魅力をストレートに発信できる同店には強みがあると感じた。
(フードジャーナリスト 鈴木桂水)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。おいしいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。"おいしい料理のその前"が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出合った産品の販路アドバイスも行う。
[日経MJ 2021年1月22日付]
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