建築家ゆかりの地(2) 宇部と村野藤吾「宇部市渡辺翁記念会館」
建築史家 松隈洋
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この劇場は、宇部を工業都市へと発展させた地元出身の実業家・渡辺祐策の功績を後世に伝えるべく、没後に関連会社の寄付で建設され、日中戦争直前の1937年4月の竣工後、宇部市へ寄贈された。村野藤吾が手がけた最初の公共建築であり、戦争へと突き進む時代状況とは相容(あいい)れない「宇部市民館」という名称で発表された。
残された資料からは、この名称に託した村野の思いが見えてくる。発想のヒントになったのは、30...
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