荻原浩「ワンダーランド急行」(12)
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1.異世界への扉はどこにあったのか? 12
「会社をサボった」なんて美冬に言おうものなら、「いまからでも行っといで」と尻を蹴飛ばされて玄関から放り出されるだろう。
サボるのも楽じゃない。サボりは想像するまでが楽しいのであって、実行してしまうと、とくに楽しくもないものだ。目の前のふたこぶ山を眺めて、私はほかりとため息をつく。
緑色に埋めつくされた山肌は、巨大なブロッコリーのようだ。地図には名前が載らな...
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