伊集院静「ミチクサ先生」(224)
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「まあ、本当にそんなことを旦那さまが奥さまにおっしゃったのですか?」
「はい。"あいつが、俺の本当の好みの女性さ"って何やらなつかしそうな顔をして笑っておられました。何でも帝大時代に駿河台の眼医者さんの待合室でお逢いになったそうです」
「そんな昔の話をよく覚えていらっしゃいますね。しかも相手の女性の話を奥さまになさるとは、旦那さまこそ、オタンチンのパ、パ、パ……」
とくが言葉に詰まると、鏡子が
「オタンチ...
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