求められる持続可能な消費スタイル 変わる価値観、アプローチも変化
奔流eビジネス (通販コンサルタント 村山らむね氏)
2020年から様々なメディアでSDGsやESGについて取り上げることが多くなった。サステナブル、持続可能という言葉が、コロナ禍で身に迫るようになってきた。

不定期更新中のブログ「らむね的通販生活」が25周年を迎えた。現在リニューアル中だが、今までは安くて早く届く、買い手にとって最適化されたネットショッピングやお取り寄せの情報を取り上げてきた。しかし、これからのテーマを考えたとき、多少品質や利便性に劣っても、サステナブルで、10年先の未来に褒められる買い物を発信していきたいと思っている。
SDGsは、今までどちらかというと企業が機関投資家からの高い評価を得るために推進してきた側面もある。ただMakuakeなどのクラウドファンディングサイトでは、いわゆるソーシャルグッドな商品が人気を集める。今年はSDGsな買い物元年になるかもしれない。
以前のエコロジーブームとも異なる。たとえばエコな買い物が流行したときにはもてはやされたパーム油由来の商品。天然素材ゆえに自分たちの住む環境には優しいが、原料のアブラヤシの需要が世界的に増大したおかげで、インドネシアなどの産地ではアブラヤシ植林のために熱帯林が乱伐され、環境破壊が起きたという。身近な環境にはよいが、目に見えない遠いところの環境は壊れてしまうというようなことが起きないよう、地球的な視野で考えることが現在は求められている。
「SDGsが生み出す未来のビジネス」著者、メンバーズ執行役員の原裕氏は言う。「企業の社会的責任(CSR)の延長での植林活動や慈善事業などを企業もメインに考えていたが、最近はマーケティング活動としての取り組みや成功事例が多数出てきている」。消費者と持続可能な商品やサービスを共創していくことができはじめている。

原氏の著作でも紹介している和歌山県の岡田織物は上質なエコファーで定評がある。今までは「安心してください、本物しかありません」というキャッチが成り立っただろう。それがこれからは、「安心してください、偽物しかありません」という説明こそが人気を集めるかもしれない。SDGsが根付いたとき、消費者の価値観は従来とまったく違ってくるだろう。
また楽天は今年のバレンタイン特集に、「選ぶことで始まる ちょっといいこと、いいきもち。」というコーナーを設けている。そこではチョコレートの選び方に4つの提案をしている。(1)「あんしんなチョコ」(製造過程におけるフェアトレードや原料がオーガニックであることなど)(2)「フードロスへの配慮」(製造過程の廃棄を少なくしたり本来なら廃棄するものを原料としているもの)(3)「チョコ以外のギフト」(オーガニックな商品や寄付)(4)「ポスト投函」(梱包材のムダを省くことのできるポスト投函可能な商品)――。
この4つのアプローチは、一般の商品選択でも応用可能で、消費者もサステナブルな購買行動を少しずつでもしていければと思う。毎日の消費活動の中で少しずつでもSDGs的な買い物をしていくことが、大きく世の中を変えることにつながると信じて。
[日経MJ2021年1月15日付]