辻惟雄(12)卒論
浮世絵をテーマに力作 「自分なりに自由に書こう」
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近世初期、中期の日本の風俗画や浮世絵に興味が深まったのは山根有三先生の情熱的な指導の賜(たまもの)だ。1953年春に美術史学科に移ったころ、学生の多くは西洋絵画に傾倒していて私もそうだった。
日本絵画に鞍(くら)替えしたきっかけは、美術史学科に進学後の56年に東京国立博物館で開かれた「雪舟展」だった。「山水長巻」を自然光の中で見た感動は今も鮮やかに心に残っている。
その清潔な美しさにハートを鷲(わ...
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美術史家の辻惟雄さんは江戸絵画史の研究に新風を吹き込み、伊藤若冲らを「奇想の画家」という視点から紹介し、一大ブームを作りました。岐阜の産婦人科医の次男として医師になるべく東大に入ったものの、医学部での学業を断念し文学部に進みました。挫折の連続だったという辻さんが美術史でいかに独自の世界を築いたか、知られざるエピソードを交えながら明かします。