モデルの一生(8) 鏑木清方「築地明石町」
作家 山内マリコ
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一昨年、行方不明になっていた鏑木清方の"幻の最高傑作"が44年ぶりに発見された。関東大震災によって失われた明治の街並みの面影が漂う美人画。「築地明石町」は3部作のうちの1つだ。
ほかの「新富町」と「浜町河岸」に描かれた女性は、伝統的な日本髪にうつむき加減でどこか自信なさげだが、この絵の女性はタイプが違う。上背があり、明治の流行であるモダンなイギリス巻きがよく似合う。忘れな草色の着物に朱の鼻緒、黒い...
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