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ギグワーカーの光と影

新風シリコンバレー WiLパートナー 小松原威氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 新風シリコンバレー

コロナ禍に揺れた2020年を振り返ると、自分の価値観が一変した人も多い。突如苦境に立たされた飲食・小売・サービス業界や、失業者数の増加を見て、ひとつの会社で働き、ひとつの会社から収入を得るというこれまで当然とされた働き方にリスクを感じ始めた人も多いだろう。

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labsに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

リモートワークの普及によりすきま時間が増大し、企業側も副業を認め出したことも拍車をかけ、アプリを通じて単発の仕事を請け負うギグワーカーという働き方が広まっている。特筆すべきは急速に広がるギグワーカーの光と影だ。

ひとつの会社に依存することなく、自分のライフスタイルに合わせた好きな時間に働ける自由度の高さがギグワーカーの魅力だ。

一方、コロナ禍でギグワーカーのセーフティーネットの脆弱性も浮き彫りになった。収入が不安定になりがちだが、有給休暇や長時間の労働規制、けがや病気の際の補償もないといった問題だ。

米国の混迷を映し出した20年の大統領選挙。その当日に耳目を集めたのは、カリフォルニア州で実施されたギグワーカーに関する住民投票だ。ウーバーやリフトを使って働くドライバーを社員ではなく、独立した個人事業主と定める法案が承認された。ギグワーカーは社員なのか、個人事業主なのかという議論の中で、今後も各国で制度が整備されていくだろう。

また、透明性と流動性が高いオンラインの労働市場では、労働単価が低く抑えられるため、ギグワーカーの貧困も問題になっている。米国の人類学者であるメアリー・グレイ氏は、人工知能(AI)業界における自動化サービスを支えるために劣悪な労働環境で働くギグワーカーの労働を「ゴーストワーク」と呼ぶ。

SNSのコンテンツ監視作業や、ウーバーのドライバーのなりすましを防ぐために顔写真の照合を行うといった、低賃金で働く「見えざる労働者」が自動化サービスを支えていることはあまり知られていない。

即日の食料品配送サービスを提供する米シップトでは、新システムのアルゴリズムで賃金形態が変更され、登録者への賃金が大幅に減少しているというニュースも話題になった。

「ギグ」とは音楽用語で単発のバンドセッションを指す。だが、ギグワーカーの実態は、そこにバンド仲間は存在せず孤独にアルゴリズムの指示のまま動き、個が消される世界でもある。

自営というには程遠いギグワーカーの現状を改善しようとしている米ダンプリング社というスタートアップが近年注目されている。大手買い物代行プラットフォームに頼ることなく、買い物代行サービスを独立開業できる。料金設定や集客も自ら行い、個性を生かして自分の創意工夫でサービスを作り上げる。一度きりのマッチングではなく長期的なお得意様が出来ることもあるという。

このような個性を生かして活躍するギグワーカーの広がりが、個人の幸せを追求し、多様なライフスタイルが尊重される社会への道筋になると信じている。

[日経産業新聞2021年1月12日付]

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