モデルの一生(7) 安井曽太郎「金蓉」
作家 山内マリコ
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安井曽太郎の「金蓉(きんよう)」は、急いで描いたように粗い。繊細なディテールが魅力のチャイナドレスは、大胆に簡素だ。裏地の質感はべっとりしているし、肩のあたりには描き直した跡が残る。
名画として名高い本作を東京国立近代美術館の常設展示室で見たとき、印象深かったのは解説にモデルの名前が書かれていたこと。小田切峯子は満州のホテルで働く、5カ国語が堪能な、政財界では有名な女性だったという。金蓉は彼女の...
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