荻原浩「ワンダーランド急行」(4)
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1.異世界への扉はどこにあったのか? 4
時間を巻き戻せないかと本気で考えた。せめて時間を止められないか。ムリか。次の駅で降りて上りに乗り換えたら会議に間に合うだろうか。
いや、だめだ。あそこは通勤快速が停まらない。普通列車でこの駅に戻ったとしても、快速の次に来るのは準急だ。
こん こん。
揺れる吊(つ)り革が側頭部を叩(たた)く。だし味噌頭の持ち主をどやしつけるように。突っ立ったままの私を向か...
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