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心に起業家精神を

新風シリコンバレー WiL共同創業者兼CEO 伊佐山元氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 新風シリコンバレー

2021年はどのような年になるであろうか。デジタルインフラやツールがますます普及し、デジタルネーティブ達によるイノベーション活動は加速するであろう。コロナ危機でも、世界的なゼロ金利政策と政府による株価支援策の恩恵もあり、ベンチャー投資の勢いは減速していない。米国のベンチャー投資は、20年を含め、過去3年は年間10兆円を超える規模だ。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

特に、20年の後半は、日米ともにIPO(新規上場)の数も大幅に増加し、米国では民泊のAirbnbは10兆円超、飲食デリバリーのDoordashは5兆円超のデビューを果たした。両社とも創業して10年前後の若いIT企業だ。

Airbnbは高騰するサンフランシスコのホテル料金に苦しむデザイナー友達を、自宅の余った空気ベッドやソファを安価に貸し出すことで助けられないかという、相互扶助の精神で生まれた。Doordashは、急増する出前依頼に対応できないパロアルト市の中小飲食店を、地元スタンフォード大の学生が空き時間にデリバリーサービスを提供して救えないかという、地元愛から始まった。

身の回りの不満や悩みに真摯に耳を傾けることで生み出された、一見大したことに見えないサービスが、デジタルの伝播力を駆使し、世界中を巻き込む巨大サービスに拡大し、我々の生活様式を変えている。天才による華やかな活動ではなく、普通の人の細やかな一つの行動がきっかけだ。

現在、我々の社会はコロナ危機により、数々の課題が顕在化している。アナログ依存が強い産業の苦境や家での引きこもりがもたらす心の健康問題、そして、環境エネルギー問題だ。

課題の大小こそあれ、今自分が持てる力と行動力を使って、身の回りのコミュニティーや社会の課題解決に貢献する。自分の問題意識に共感する仲間を巻き込んで、自分のみたい未来を実現する。今年は誰もが心に起業家精神を持つ年にしてはどうだろうか。

私は起業家精神とは、自分が感じる身近な課題や不満を解消させるために取り組む、自発的な試行錯誤をいとわない強い心の持ち様だと考えている。この精神は新しい事業を起こすと言ったビジネスに限った話ではなく、社会を構成する誰もが、起業家になれる。

社会の課題は政治家がなんとかしてくれる。会社の危機は、社長と経営幹部が救ってくれる。そんな受動的な姿勢で生きることはやめなければならない。自らの想像力を駆使して行動し、失敗から学べる前向きな勇敢さ。社会の一員として、自分ができることを積極的に実践する、能動的な生き様が求められるのが、21年ではないだろうか。

かつてドイツの詩人は、心に太陽を持ち、くちびるには歌を持つことで、人は艱難辛苦を乗り越えられると言った。新年を迎え、私はこう宣言したい。

心に起業家精神を持て。

あらしがふこうと、ふぶきがこようと

天には黒くも、地には争いが絶えなかろうと

いつも、心に起業家精神を持て。

[日経産業新聞2021年1月5日付]

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