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心通う土佐弁のもてなし 龍馬の生まれたまち記念館(高知市)

おもてなし 魅せどころ

NIKKEI MJ

坂本龍馬の足跡をたどる高知市立「龍馬の生まれたまち記念館」は、2004年3月に開館した。生誕の地である同市上町(かみまち)にあり、龍馬が生まれて死亡した11月15日(実際の生年・没年は旧暦)は全国からファンが訪れる。そして館内に響く土佐弁での案内に魅了される。

ガイド歴11年の古谷純子さん(左)はリピーターとメールでやりとりする(高知市)

「まっことようきたねえ(本当によくいらっしゃいました)」。11月15日、三重県からやってきた女性は館内に入って流れてきた土佐弁の自動音声ににっこり。女性は龍馬が少年時代を過ごした上町を再現したジオラマ模型を見学。その後、龍馬と姉の乙女の人形が鎮座する部屋で「やっとくることが出来ました」と寄せ書きした。「土佐弁に癒やされた」という。

2階建ての施設を巡ると龍馬が生きた時代の資料やゆかりの品が豊富に展示されている。龍馬ファンの聖地に、この日はコロナ禍の20年も300人が来場。09年には台湾の元総統で龍馬の「船中八策」という国づくり構想に共鳴した故李登輝氏も来館した。

「私たちは記念館に来てくれた人を家族のようにもてなす。だから自然に地元の言葉が出てしまう」。スタッフの伊藤愛子さんはこう話す。他人でも一度話をして意気投合すればもう家族。こんなコミュニティーを「高知家」と呼ぶ。

もてなしにはガイド役である50人ほどの観光ボランティアも欠かせない。12月上旬に訪れたときはガイド歴11年の古谷純子さんがいた。龍馬と乙女の人形がある部屋で観光客に「乙女の隣に座っているのが龍馬さんです」と話したが口調がぎこちない。

「標準語だと緊張する」とこぼす古谷さんに、土佐弁で話すよう水を向けると、笑顔で「乙女の隣にすわっちゅうがわ、龍馬さんながやき」と返してくれた。こんな「高知家」の雰囲気を気に入り、リピーターとなる人が多いそうだ。古谷さんは来訪後の観光客とメールでやりとりもする。

施設は年中無休が売りだが、20年はコロナの影響で4月10~5月10日の間は休館した。最近ようやく客足が戻り始め、10月は前年同月比で2割減と減少幅は縮小傾向にある。だが今年の来館者は19年の3万8000人に遠く及ばない。

市は今後、施設のデジタル化を進める。館内のWi-Fi環境をリニューアルし利便性を向上させる。SNS(交流サイト)を通じて龍馬に関するエッセーを発信したり、館内で定期的に開く企画展をオンライン中継したりして、訪れるのがままならない全国のファンをつなぎとめる考えだ。

スタッフもガイドも今は感染防止を徹底しながら「ゆっくり見とうせ(ゆっくり見てください)」と語りかける日々だ。

(高知支局 保田井建)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2020年12月28日付]

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