ベートーヴェン頌(5) ティツィアーノ・ヴェチェッリオ「田園の奏楽」
文筆家 高野麻衣
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袖の膨らんだ赤い衣服に身を包みリュートを奏でる青年と、金髪で裸足(はだし)の青年。2人は夕暮れの草原に座っている。傍らには2人のニンフが寄り添い、そのうち1人は笛を吹いている。木立の下では羊飼いが羊の群れを見張っている。富と貧。聖と俗。相反するものが混在する画面に、ただ音楽だけが鳴り響く。
かつてジョルジョーネの作とされていた本作は、現在では弟弟子ティツィアーノの若き日の作品と考えられている。田...
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