発酵ツーリズム支える拠点 小玉醸造(秋田県潟上市)
おもてなし 魅せどころ
「ヤマキウ」ブランドの味噌・醤油(しょうゆ)や、日本酒「太平山」で知られる小玉醸造(秋田県潟上市)は蔵併設のショップを改装した。蔵見学のほか、味噌玉作りや試飲を提供する。秋田県が旗を振る「あきた発酵ツーリズム」の拠点施設として観光客を呼び込む。

1日2回の蔵見学は予約なしでも受け入れている。見学した秋田市の40代女性は「勉強になった。ショップで蔵限定の日本酒を買いたい」と話した。
1917年築の資材倉庫を県の補助を受け、約480万円で改装した。2009年からショップとして運営してきたが、今回新たに「KooLab(クラブ)」という名称を付けた。由来は「小玉おいしいラボ」。3月に完成したものの、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い営業を休止し、6月に再開したばかりだ。
約100種類の商品が見やすいように陳列棚を変えたほか、試飲・試食スペースを整備した。これまで在庫が切れると倉庫まで取りに行っていたが、商品棚の下に補充在庫を持つようにした。
日本酒の試飲コーナーもカウンターの下に冷蔵庫を置き、顧客の待ち時間を減らした。「太平山 天巧3種飲み比べセット」(1000円)や甘酒風味の「あめこうじソフトクリーム」(300円)が楽しめる。
1960年代初めまでもろみを搾るために使われていた木製の「槽(ふね)」も展示。昔の酒造りに思いをはせながら、試飲・試食のテーブルとして使ってもらう。
8月に始めた「味噌玉作りワークショップ」が親子連れらに人気だ。味噌玉はお湯を注ぐだけで味噌汁が出来上がる自家製インスタント味噌汁。味噌、だし、具を練り込んで丸めて作る。
参加費1人500円の事前予約制で、毎月第1土曜日に2回計8人を対象に開いてきた。予約が多く好評なため、12月からは平日午後にも開催している。
秋田県は酒蔵や味噌蔵などを活用して観光客を呼び込む「あきた発酵ツーリズム事業」を17年度から始めた。ヤマモ味噌醤油の高茂(湯沢市)、味噌醤油の石孫本店(同)、羽場こうじ店が手掛ける食堂「旬菜みそ茶屋くらを」(横手市)、日本酒「高清水」の秋田酒類製造(秋田市)、日本酒「雪の茅舎(ぼうしゃ)」の斎弥酒造店(由利本荘市)を拠点として整備した。
小玉醸造は6カ所の中で唯一日本酒、味噌、醤油のいずれも醸造している。2021年度の年間来場者数は3万人と18年度(1万6000人)に比べ大幅増を目指す。小玉真一郎社長は「今回の整備はコロナ収束後の集客に寄与し、発酵食文化を知ってもらえる」と話す。
(秋田支局長 早川淳)
[日経MJ 観光・インバウンド面 2020年12月13日付]