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新常態 始まった職住反転

SmartTimes iU情報経営イノベーション専門職大学教授 久米信行氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

「どこでも好きな場所で仕事をしてよい」。会社にこう言われたら、どんな住環境と暮らし方を選ぶだろうか。コロナ禍で東京からオフィスが消えようとしている。幸か不幸か在宅テレワークでも仕事ができることが実証され、中には社員満足度が高まった企業もある。都心にオフィスを構えるより、地方に移転し在宅勤務も認めた方がコストは低い。満員電車に乗らず、家族との時間も大切にできる働き方が優秀な人財をひきつけるきっかけにもなる。

オフィスが都市から地方に移転すれば住宅事情も変わる。三密が避けられ自然に恵まれた環境が選ばれたり、オンラインでの仕事や学校の授業に対応できる個室が多い住空間が求められたりするだろう。この新潮流を反映して、都会から新しい移住者を集める独創的なゲートコミュニティーがある。房総半島のほぼ中央に位置する「ミュアヘッドフィールズ」だ。

東京ドーム約6個分の広大な住宅地を有する土太郎村は森に囲まれ、湖を見下ろすように家々が悠々と立ち並ぶ。公園にはゴルフのショートコースもある。名匠ミュアヘッド設計のブリック&ウッドゴルフクラブに隣接し一体化したコミュニティーを形成している。中にはマイカートでゴルフ場に通う住民までいる。村の創立メンバーで毎日新聞社元常務の中島健一郎さんから、初めて現地を案内されたのは、今から6年前だ。

中島さんは国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を先取りした村創りを目指していた。自然エネルギーで自給し、建材や食材も可能な限り地産地消で賄おうというエコヴィレッジ構想だ。中島さん自身も都心のマンションから移住するのに合わせ、地元木材と土壁を活用したクーラー不要のエコ住宅を建てていた。完成後、村のイベントで歓待を受け、快適な住まいに泊めていただいた。

それ以来、リタイア後、いつか都会を離れて緑の中でエコライフを送りたいと思うようになった。ところが、先日、中島さんと再会した時、コロナ後は現役世代が村に移住してきていると教わって驚いた。最寄りのバスターミナルから60分で東京駅前に通うことができるらしい。たとえ都心にオフィスがあっても、会社通いは週1~2回で、あとは在宅テレワークという人も増えている。それならば、いっそのこと、これまでは別荘地だと考えられてきた自然豊かな住環境を選ぶ人が相次ぐのもうなずける。

近未来は人工知能(AI)やロボットにはできない仕事をこなす創造的な人財が重用される。そんな希少人財ほど仕事場を選ばず、オフィスに縛られることを嫌うだろう。都心のオフィスとタワーマンションが理想とされた時代が終わり、創造性を育む緑の住環境とエコライフが優先される「職住反転」の時代の足音が聞こえている。

[日経産業新聞2020年12月2日付]

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