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ゲーム実況と知財保護

SmartTimes 東京農工大学教授 伊藤伸氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

動画投稿サイトではゲームをしながら自らその様子を伝える「ゲーム実況配信」が盛んだ。ゲーム実況自体は以前からテレビのバラエティー番組等でみられたが、2010年代に動画投稿サイトの利用者拡大に伴って発展した。投稿者は芸能人から一愛好家まで混在しており、特に若い男性に人気のジャンルのようだ。

新聞記者を経て、2001年農工大ティー・エル・オー設立とともに社長に就任(現任)。13年から東京農工大学大学院工学府産業技術専攻教授。大学技術移転協議会理事。

ただ、ゲームの映像部分は著作権法上、映画の著作物に該当する。権利者に無断で利用できない。投稿者が権利侵害について十分な知識を持っているかが心配だ。利用者の活用事例を基に製品やサービスを開発する手法を「ユーザーイノベーション」と呼ぶ。ゲーム実況の場合、投稿者は一般に動画投稿サイトから視聴数に応じて広告収入を分配される。投稿者はゲーム実況によって付加価値を創造し、動画投稿サイトも恩恵を受けるという仕組みだ。課題は著作物の権利保護とクリエーティブな創作活動との両立であろう。 

実際にゲーム実況の配信を巡りゲーム会社の対応は分かれている。任天堂は18年から同社のガイドラインに沿ってゲーム実況に著作権侵害を主張しない方針を取っている。一方、原則として個人のゲーム実況を認めていない企業も少なくない。一般にゲーム実況でゲーム本体の利用者増加が見込めればよいが、ゲームのストーリーが知れ渡ることを危惧すれば規制せざるを得ない。

こうした事情は漫画やアニメ、小説の二次的創作やコスプレも同様だ。ネット上や様々なイベントでは、とても権利者の許諾を得ているとは思えない著名なキャラクターの利用が多い。大半が黙認しているのだろう。

近年、著作権法は何度も改正されてきた。この10月には漫画等の海賊版サイトに誘導する「リーチサイト対策」に関する改正著作権法の規定が施行された。著作権法には刑事罰まで規定されている。だが、デジタル情報は複製が容易なため、意識していないと個人でも著作権を侵害する可能性がある。知的財産は形がないだけに不正利用に痛みを感じにくい面もあるだろう。法整備が実態を必死で追いかけているようだ。

IoTの急速な発展や働き方改革が進み、個人が様々な著作物と関わる機会は増えている。内閣府の調査によると、副業としての従事を含め、フリーランスは19年に306万~341万人程度と推計された。個人が既存の著作物を利用して収益を求める動きは今後一段と加速しそうだ。

知的財産の侵害を避け、クリエーターや企業など権利者の利益を確保しながら既存の知的財産に自らのアイデアを組み合わせて活用するビジネスを模索する時代に入っている。ゲーム実況のような新たなエンターテインメントビジネスが成功するかどうかは関係者の著作物への敬意にかかってるようにみえる。

[日経産業新聞2020年11月25日付]

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