「自宅フィットネスバイク」人気のワケ ライブ配信や没入感…手軽に
奔流eビジネス (スクラムベンチャーズ マーケティングVP 三浦茜氏)
自宅でできるフィットネスバイク「ペロトン」が人気だ。約2000ドルのバイクを購入し、月額39ドルのサブスクモデルで、バイクのみならずヨガやストレッチなど、数千ものエクササイズコンテンツにアクセスできる。

2000ドルのバイク――。ぱっと聞くと高いし、気軽に買える気がしない。しかしここ最近、私のまわりでも購入する人が増えてきた。
世の中には多くのエクササイズアプリがあり、ユーチューブには無料動画もある。安価なホームエクササイズバイクを買うこともできる。なぜペロトンが人気なのか。ショールームに試しに行ってみたところ、ペロトンはジムの代替ではなく、ジムより良い体験ができることがわかった。
まずコンテンツの質の高さだ。世界中の人気インストラクターをスカウトしており、インストラクターきっかけで入会する人もいるそうだ。オリンピック選手など有名アスリートとコラボした企画なども行っている。エクササイズ中の音楽部分で有名アーティストとコラボする企画などもある。オンラインだからこそのセレブリティを巻き込んだコンテンツは、ファンにとっては得難いものだろう。
次にライブ配信だ。オンデマンドで視聴できるコンテンツ以外に、毎日30時間を超えるライブクラスが開催されている。自宅でいつでもできるサービスではあるが、人間いつでもやれると思うとやらないもの。時間が決まっていることは大事な要素なのだ。
さらにはコミュニケーションだ。画面の右側に参加者同士がコミュニケーションできる画面があり、参加者同士がハイタッチを送りあったり、励ましあえる機能が用意されている。録画のクラスを受けているときにも、今同じコンテンツをみている人という欄が表示され、お互いに励まし合うことができる。非同期コンテンツでも同期を感じられる仕組みは見事だと感じた。

没入感も強い。マシンに座って体勢を作り、20インチ超の大きな画面に向かう。そしてインストラクターがしっかり目を見て話しかけてくれる。容易にコンテンツに入りこめるのだ。数分の体験セッションでも、自分に話しかけられているような気持ちになった。これはスマホでは味わえないものだろう。何かをセットアップする必要がなく、すぐ始められるというのも利点だ。
最後に継続的に記録が取れるのも大事だと感じた。あたり前だが、ペロトンは自分で記録せずともマシンに記録が残る。アップルウオッチとつないで、呼吸や心拍数もモニターできる。ラジオ体操の券のようにハンコが押される機能もある。記録に残ると継続したくなる気持ち、前回を超えたい気持ちが高まる。
この5つの要素はコロナ禍でオンラインコミュニケーションが増える中で、他のサービスでも参考にできるポイントが多くあると感じた。
冒頭でバイクは約2000ドルと書いたが、実際は分割払いが可能。サブスクと合わせても月額で考えると、ジムと遜色ない金額となる。とはいえ安くはない買い物。既存ユーザーによる満足度の高い口コミが、新規ユーザーの購入を後押ししているのは間違いないだろう。
[日経MJ2020年11月20日付]