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試されるグリーンリカバリー プラ容器削減など急務に

Earth新潮流 日本総合研究所理事 足達英一郎氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Earth新潮流

新型コロナウイルス禍により、経済収縮が現実のものになった4~9月期の決算発表が相次いでいる。特徴的なのは、コロナ禍がすべての企業にネガティブな影響を与えているわけではない点だ。

コロナ禍の持ち帰りや宅配需要でプラ容器の使用量は膨らんでいる

例えば、大手食品容器メーカーは2020年4~9月期決算で増収増益となり、通期予想を上方修正したうえで増配も決めた。背景には「巣ごもり消費」と「新しい生活様式」がある。スーパーマーケットの精肉・鮮魚向けトレーなどの出荷が大幅に増加。加えて、飲食店や外食チェーンのテークアウトやデリバリー容器の出荷が急増しているという。

自治体をみても、東京都小平市は4~6月の3ヵ月間の収集プラスチック製容器包装量は前年同期比で約8.9%増えたと発表している。こうした状況が続けば、分別収集を担う自治体の負担増も懸念される。

容器削減へ対策も始まっている。京都府亀岡市では、登録店舗で市民がテークアウトやデリバリーを利用する際、エコバッグや容器を持参したり、箸やスプーンを辞退したりすると1枚10円分のクーポンがもらえる制度を導入。宮城県仙台市は7月、ワンウェイプラスチックをはじめとするプラスチックを中心とした家庭ごみ削減の取り組みについて、民間企業などから提案やアイデアを募集することに踏み切った。

プラスチック製容器包装は衛生面や品質保持に優れ、中身をよりよく見せる利点もある。しかし、気候変動対策の点から見れば、利用拡大を手放しでは喜べないのも事実だ。公益社団法人の日本包装技術協会の調べによれば、プラスチック製の包装・容器出荷数量は15年から19年にかけてやや増える傾向にある。

リサイクルは進んだといっても、多くは焼却時のエネルギーを熱や蒸気などで回収するサーマルリサイクルだ。

確かに、食品トレーでは使用済みトレー及び使用済みペットボトルを原料にした容器の比率は高まっていて、バージン原料を使うより3割程度は二酸化炭素(CO2)排出量を減らせると言われる。ただ、使用量全体が急増してしまえば温暖化ガスの排出総量も増大する。

日本も菅政権が「50年までに、温暖化ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわちカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した以上、原単位(一定量の生産物を作る際に使用・排出するエネルギーやCO2)を前提にした企業目標は修正される必要がある。

プラスチック製容器包装でも、ケミカルリサイクルの確立や石油由来に代わる代替素材の開発が、ウイズコロナの状況下で一層の急務になる。

米ウォルマートは2040年までの温暖化ガス排出ゼロなど意欲的な目標を打ち出した=ロイター

米国では9月21日、世界最大のスーパーであるウォルマートが「修復・再生企業(a regenerative company)になる」という宣言を発表した。「40年までに温暖化ガスの排出をゼロにする」と大きなメッセージを掲げた。

米国で新型コロナウイルス感染症による死者が20万人に超えた状況下で、(1)自社施設で使う電力を35年までに100%再エネにする、(2)長距離トラックを含む自社保有車両の電動化とゼロエミ化を40年までに達成する、(3)40年までにすべての店舗や配送センター、データセンターでの冷熱機器を低負荷なものに転換する、という長期目標をあえて発表したのだ。温暖化ガスの排出した分を別の吸収源で相殺するオフセットを活用せず、目標達成を目指すとしたところに、同社の意気込みがうかがえる。

加えて、「2030年までに少なくとも5000万エーカーの陸地と100万平方マイルの海洋で適正な管理と保全が行われるようにする」というメッセージも掲げた。この面積は、陸地が北海道の約2.5倍、海洋がフランスの約4倍にあたる。

大規模な自然生息地の保全、調和型農業の実践、持続可能な漁業管理、森林保護・保全を実践し、自然生態系を保護する努力のもとで原料調達を行うサプライヤーと協力していくと明言した。傷つけられ、回復が望めなくなる直前の自然資本に手を差しのべ、致命的な毀損を回避して、その生産力に見合ったスビートでビジネスを進めていくというビジョンが、今回の「修復・再生企業」という名前に込められているといってよい。

ウォルマートは19年2月、プライベートブランド(PB)商品で、プラスチック包装・容器削減の行動計画を発表している。25年までにプラスチック包装・容器を100%リサイクル可能、再利用可能、堆肥化可能なものに切り替えるというのが柱だ。

生鮮食品などでも容器包装の削減に取り組んでおり、例えば精肉販売ではトレーを使わず、真空パッケージ包装をする「ノントレイ商品」の販売を拡大している。今後は、PB商品以外の関連メーカーにも、対策強化をさらに働きかけることになるだろう。

わが国のカーボンニュートラル宣言の直後、閣僚からは「日本としても潜在成長率を引き上げていくなかで、グリーンリカバリーをどう活用していくかも重要」という趣旨の発言が出た。

コロナ禍で落ち込んだ経済を環境投資で立て直していくグリーンリカバリーは、あらゆる政策に横ぐしを刺して、気候変動の負の外部性を軽減させることや市場の失敗を是正しながら新たな経済活動を作り出していくことが本質だ。

当然そこには、ある経済活動を抑制して、別の経済活動に誘導するという政策も含まれる。世界に目を転じれば、欧州に続いて米国でもグリーンリカバリーが始動することが確実になった。わが国でも、政府セクターと企業セクターの双方で、その本気度が試されている。

[日経産業新聞2020年11月13日付]

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