道産食材熟知したシェフの味、手ごろな値段で 札幌市

飲食店のシェフはお店を移籍することが多い。そんなシェフの味にほれ込んで、筆者は"追っかけ"をすることがある。
札幌市内にあるワインレストランで、親しみやすさのなかにも斬新さが光る料理を提供する塚田宏幸シェフと知り合った。調理法の幅の広さはもちろん、北海道食材への造詣が深く、おいしく勉強をさせていただいた。
数年ぶりに札幌に足を運ぶことになったので、知人を通して連絡をとったところ、老舗百貨店の丸井今井札幌店にある「ブラッスリー コロン ウィズ ル・クルーゼ(コロン)」に移籍したという。
コロンは北海道食材の産地とつながったレストラン。北海道産小麦で作られたパンと厳選した北海道食材を塚田シェフの技で調理して提供している。
店名にあるようにフランスのキッチンウェアメーカー「ル・クルーゼ」をパートナーに迎え、小型の鍋であるココットを使ったメニューが多いのが特徴だ。
今年で8周年を迎え、女性客を中心に、多いときは昼時は30席が3~4回転する。
取材時には「軽くスモークした秋鮭と新じゃがのグラタン ドリンクセット」(税別1630円)を注文した。セットには前菜、サラダ、パンバスケットがつく。料理には道内の生産者と塚田シェフが交流をしてそろえた食材が使われるので、リーフレタス一つとってもパリッとした歯触りがあり味も濃い。
サラダには加熱したキノコやハーブなどがあしらってあり、味覚と食感を飽きさせない。メインの秋鮭は肉厚でスモークの香りが食欲をそそり、チーズと新じゃがのグラタンとは好相性だ。
バスケットに盛られた5種類のパンは、どれも異なる風味で、かめばかむほどうま味が増す。料理もすごいが、ある意味パンが主役になっている。食べきれなかったら、持ち帰れるのもうれしい。
「北海道にはまだ知られていない食材やそうした食材を育てている生産者の皆さんがいます。そうした食材をもっと知っていただけるようなメニュー作りをしています」と塚田シェフは語る。
ただ者ではないパンは、「シニフィアン シニフィエ」(東京・世田谷)のシェフブーランジェ(パン職人)志賀勝栄氏監修によるもの。志賀氏といえば、高度な技術と理論で、日本のみならず世界からも注目される業界の第一人者だ。
コロンでは、事前に予約することで塚田シェフのフルコースが食べられることもある。4人以上で、多忙な塚田シェフの予定が空いている日限定なので、店側との相談が必要だ。

閉店時間は丸井今井の閉店時間と同じ午後7時30分なので、スタートは午後4時、遅くても午後5時が望ましい。筆者は何度も挑戦してようやく体験できた。そのかいあって、和洋の技法を駆使した塚田シェフの料理の数々に心底酔いしれた。
コロンは婦人服売り場と同じフロアで営業しているから、驚きだ。実はコロンの運営は北海道の芸能プロダクション「クリエイティブオフィスキュー」。塚田シェフも同社に所属している。次回はなぜ、芸能プロダクションのオフィスキューが飲食店を経営しているのか、伊藤亜由美社長のインタビューをお伝えする。
(フードジャーナリスト 鈴木桂水)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。おいしいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。"おいしい料理のその前"が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出合った産品の販路アドバイスも行う。
[日経MJ 2020年11月13日付]
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