ウェブ会議「疲れ」どう解消? 適度なムダ、織り込む余裕を
先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

日経MJ
コラム(ビジネス)
2020/11/8付
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NIKKEI MJ

最近、マイクロソフトが、同社が販売する企業内のコミュニケーション用ツールに、「バーチャル通勤」という冗談のような機能を付け加えてちょっとした話題になった。自分や同僚に会議に参加しない「通勤」時間帯を表示するという単純なものだが、機能を追加した理由は、通勤は仕事と生活の切り替えを生み、生産性や心身の健康維持に効能があるとの研究結果がわかったからだという。

ウェブ会議はコロナ禍で一気に広がった

ウェブ会議はコロナ禍で一気に広がった

在宅勤務が一般的となり、欠かせなくなったのがウェブ会議だ。Zoomを筆頭に、ビジネスパーソン、教師・学生にとって、いまやスマートフォンを押しのけて「IT」の代名詞的な道具となった感がある。

今年は多くの人が、ウェブ会議に慣れ親しむ期間を過ごしている。こうした利用者が感じるのが、ウェブ会議を続ける中での「疲れ」ではないだろうか。筆者はコロナ禍以前からウェブ会議をたびたび利用し十分に慣れている。それでもウェブ会議が仕事の中心なってから、ある種の疲労感を意識するようになった。

イードが今年半ばに実施した調査で、この「疲れ」が、多くの人々に共通する感覚であることが確かめられた。調査では「対面より疲れる」、「対面よりやや疲れる」との回答の合計が半数弱を占め、一定数の回答者が「疲れ」を感じているようだ。もちろん、ウェブ会議に出席する頻度など、単純に慣れの程度だとも理解できるが、それまで数多く行ってきたはずの会話や会議に改めて慣れが求められるというのも奇妙だ。

この疲れの理由に「非言語コミュニケーション」のしづらさがあるとイードは分析する。非言語コミュニケーションとは、例えば表情やしぐさなどを通じて、双方の意思を伝えあうことだ。ウェブ会議ではこれがしづらいとする。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

小さなウィンドウに分散した会議の相手の表情を読み取って意思を理解するのは、視界が広く開けている現実の会議より難しい。顔以外の部分の動きも読み取れない。言語以外の要素で相手の意図をくむことにたけているような人ほど、疲れを感じやすいとも指摘する。不足する非言語的な情報を補うため集中力が求められ、それが疲労感を招いているというわけだ。

一方で、この集中力の駆使のプラス面もある。東洋大学をはじめとする15の大学がこの夏、学生にオンライン講義と対面式講義を比較させた。結果はオンライン講義の継続を希望する回答が半数近くにのぼった。理由の中には「私語がない」「教室での講義より集中できる」などもあげられたという。周囲の雑多な情報など気が散る要素がなく、講義に集中できるわけだ。

ウェブ上では移動時間がゼロのため、次から次へと会議を詰め込める。早朝から深夜まで会議ができるようになっては、集中力の駆使が過多になるのも当然だ。それが慢性的な疲労やメンタル面でのダメージにつながるという可能性も無視できない。

移動時間のムダが省けて生産性が高まると評価のされているウェブ会議だが、朝晩の「通勤時間」や会議の合間の「移動時間」などムダを適度に織り込むようなワザも、どうやら必要になってきているようだ。

[日経MJ2020年11月8日付]

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