新常態のマッチングアプリ 恋愛に限らず「+α」で商機
奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)
ウィズコロナの状況では様々なイベントが自粛され、エンターテインメント業界に逆風が吹いている。もうひとつの大きな課題になっているのが新しい出会いの減少だろう。人と人との出会いの機会としてリアルのイベントは大きい要素だったが、現在のように激減している状況では出会いにおいてもオンラインが重要なものとなりつつある。

男女の出会いにおいてマッチングサービスのシェアは年々拡大していた。調査結果などを見ると、コロナ前でも若者は恋愛相手との出会いのきっかけとして、SNSやマッチングアプリなどが2割ぐらいを占めたものもあった。それがコロナ禍により、今後の出会いはSNSやマッチングアプリを中心に考えているという人が半数以上になっているとの結果もある。
マッチングアプリも進化し近年は顔の好みや性格、行動データなどAIを活用してマッチング精度を高めるといったアプローチも増えている。海外では遺伝子で相性を診断するマッチングサービスなども登場しているようだ。
そうした中でニューノーマル時代を象徴するようなサービスとして成長しているのが「Dine」だ。男女のマッチングと同時に、最初にデートするレストランを予約する機能がセットになっているところがユニークだ。
飲食業界は「Go To イート」などで客足が戻りつつあるが、接待需要や宴会需要などの回復は途上。都市部で客単価がミドルクラス以上の店舗の回復は遅い。そんな中で「デートで食事する」のは客単価も高くなる傾向にある貴重な需要で、Dineは飲食デートを創造する救世主となっている。
Dineによると、すでに月に1万5千人以上のデートマッチングが成立しているという。中には月に100組のカップルを送り込んでいる飲食店も出てきているようだ。

もちろんデートに向いているお店を厳選して開拓しており、店舗側が掲載希望を出しても必ずしもかなうわけではない。ビジネスモデルも成功報酬型の送客手数料になっている。店舗側のメリットとしては客単価が平均よりも高くなる傾向があるだろうし、特定のおつき合いの人を見つけるまでのマッチングしている間は、男女ともにリピートしてくれる確率も高い。さらにドタキャンを防ぐ事前クレジットカード登録機能もある。
コロナ禍でも外出が増えた8、9月はこれまで最高のデート数を記録し続け、登録者数も増えてサービスは順調に成長を続ける。Dineを手がける企業の共同創業者兼CEOの上條景介氏は「人は目的があると会いやすいし、会う人が変わると人生が変わる。このアプリは人生を変えるために会う目的を設定してあげるサービスだ」と話す。
確かに数年前に「肉会」という肉を食べることを目的にしたマッチングサービスの流行もあった。筆者も実際そこで出会った人を採用したり、一緒に仕事をすることもあった。オンラインでのコミュニケーションが当たり前になったニューノーマルな時代には恋愛目的に限らず、ビジネスや趣味など様々な出会いの目的を生み出すため、新たなマッチングサービスの可能性が広がるのではないだろうか。
[日経MJ2020年11月6日付]