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オフィスレス、先駆者に学ぶ 様々なツール駆使し意思疎通

先読みウェブワールド (瀧口範子氏)

NIKKEI MJ

在宅勤務やリモートワークが取りざたされているが、コロナ禍のずっと前からオフィスを持たず運営してきた企業は少なからずある。特に有志の開発者らが各地から貢献する、オープンソース開発の歴史を受けつぐ会社はそうだ。

コミュニケーションが重要な要素となる(イメージ)

その中でもよく知られるのがオートマティック社。ブログのプラットフォームとして有名なワードプレスを開発する企業だ。2006年の設立当初は小規模なオフィスを構えていたが、今は会議スペースだけになっているという。

現在の社員は76カ国に散らばる1100人以上。社員数も国の数も設立以来増え続けているが、リモートワークは変わらない。それでも開発はスピーディーに進み、プラットフォームは更新される。

同社が何より重視しているのがコミュニケーションだ。同社の信条には「コミュニケーションは分散チームにとっては酸素と同じ」という一文が見える。設立当初はそのためのツールが存在せず、自らが社内用ブログやチャット・ツールを開発した。現在は社外で開発されたツールも利用しながら、開発チーム用、連絡用、井戸端会議用など用途に応じて使いわける。メールは閉鎖的で時間もかかるので利用せず、瞬時性、透明性を優先。時差もあるためコミュニケーションは文面中心で、明快な表現が求められる。

ミーティングにはズームやハングアウトを利用するが、すぐにブレーンストーミングが必要だという時には、定期ミーティングを待たず15分でも参加可能な数人で始め、後に情報を共有するという方法をとる。担当する仕事の内容と締め切りは社内ブログに掲載され、作業の進捗状況はまとめて確認できる。積極的にモニターするのではなく、急に作業量やコミュニケーションが減った場合に注意を向けるといった意図で利用する。

社員のため外部の専門家を招いたセミナーも開く。同じ地域に住む他の社員と会いたいときの食事代を認めたり、希望する社員にはコワーキングスペースの利用料やカフェでの喫茶代をサポートしたりといった予算を設けている。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

ただ同社が完全にリモートワーカーだけの分散チームでやってこられるのは、年1回の全社員ミーティングがあるからだったという。しかし、コロナ禍で社員の旅行は全て中止状態。このあたりをどんなアイデアで補うのかは興味深いところだ。

分散チームのためのサービスも出てきており、どこで集まれば旅費が最小限になるかを計算するツールを備えた旅行サービス、各地の福利厚生を適用できるサービスなどもある。シリコンバレーのベンチャーキャピタルは、分散チームでは集中した開発ができないとみなしてきたが、これも変わりつつあるようだ。

分散チームの利点は、どこにいても優れた人を雇えること、社屋運営のためのコストが不要なこと、社内政治を少なくして、組織をフラットに保てること。シリコンバレーの高給や高家賃を避け、人材獲得競争や転職に気をもむ必要がないこともあるだろう。考えてみれば、最先端テクノロジー企業がシリコンバレーだけに集中していたのも不思議なことで、求心力も変わっていくかもしれない。

[日経MJ2020年10月26日付]

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