頻繁に消毒、手荒れ注意 専門家に聞くケアのポイント

コロナ禍で手洗いやアルコールによる手指消毒の機会がめっきり増えた。気づけばなんだか手が乾燥している。ハンドクリームの塗り方や頻度は今まで通りでいいのだろうか。
店などに入るときはアルコール消毒、帰宅後はせっけんと流水でしっかり手洗い。手荒れしないよう、1日3~4回、ハンドクリームは塗っている。ところが野村皮膚科医院(横浜市)院長の野村有子さんに両手を見せたら「あら、カサカサ」と驚かれた。特に乾燥を指摘されたのが右手の指。「利き手の指はよく物を触るので乾燥しやすい」
同院でもコロナ禍で手の荒れに悩む患者が増えているそうだ。今後は「冬に向け、空気の乾燥と気温の低下が進むのでより注意が必要」(野村さん)。荒れてひび割れや傷ができると、そこからウイルスや菌が入る危険性もある。
感染症を防ぐための手洗いは必須だが、その後のアルコール消毒までは要らない。清潔なタオルで優しく拭き、ハンドクリームで潤いを与える。つい塗るのを忘れがちだが、できれば水を使う度に保湿するのが望ましいという。

クリームは人さし指の先から第1関節までの分が一回の使用量。手のひらの数カ所において全体に広げ、指を1本ずつ根元から指先に向かって丁寧に塗る。気になるところは二度塗りすると効果的。特に親指と人さし指はよく使うので乾きやすい。アルコール消毒により手のひらの真ん中も荒れやすいので要注意だ。
手洗い用せっけんも使い分ける。殺菌成分が入った強いものは帰宅後に、それ以外のときは肌に優しいものにするなど、過度に手に刺激を与えないようにし、洗い物の際はゴム手袋をはめる。洗濯物をたたむなどの家事では木綿の手袋で保護。やりにくければ乾燥している方の片手だけでもつける。これらがニューノーマル(新常態)の生活で気をつけるポイントだという。
悩ましいのが外出先での消毒だ。駅ビルなどには大抵、入り口と店舗ごとに消毒剤が置かれてある。「手が荒れている人は、透明のビニール手袋をしてその上から消毒する方法もある」(野村さん)
CMなどで美しい手を見せる「手タレ」はどうしているのかと気になり、パーツモデルの金子エミさんに聞いた。手洗いと消毒の頻度が増えたが「ちゃんとケアをしたら大丈夫だと分かった」。手洗いや食事の後など1日何十回でも保湿しているそうだ。
「肌には水分と油分の両方が大切」とまず化粧水をたっぷりつけるのが金子さん流。「面倒臭いけど、潤いがしっかり保たれる」。年齢が現れやすい指の第2関節はしっかり曲げてしわの中にも入れ込むほか、爪の先と周りと水かきも忘れずに。
「肘も年齢が出やすい」ため、手から肘まで化粧水を。その次は同じようにハンドクリームを塗る。クリームは手のひらで温めると伸びがいい。外出先にはクリームを化粧水で割ったものを容器に入れて持ち歩いている。
野村さんも金子さんも口をそろえるのが、就寝前の重点的な保湿。「特に湯上がりは顔と同じように塗って、1日酷使した手をいたわって」(金子さん)。助言をもとに夜には美容液成分の入ったクリームを使い始めたが、疲れてさぼってしまうこともある。
忘れずにハンドケアをするにはどうしたらいいだろう。ニベア花王(東京・中央)のスキンケアクリーム担当、新田成美さんに相談すると、ぬれた手でも使えるハンドミルクを紹介された。手洗いのついでになじませて、そのまま洗い流せる。「潤いは残るものの、ベタベタしないので人気」という。
洗面所に置くと、手洗いと同時に保湿もできて一石二鳥。塗り忘れも減った。日中はハンドクリームのベタつきが不快なら、ジェルタイプを使うといいという。さっぱりした使用感で、パソコンのキーボードを触っても平気だ。
好みやニーズによって使い分けつつ、いかに生活の場面に組み入れるかが大事だと分かった。まだまだ頻繁な手洗いの習慣は続きそう。本格的な冬が到来する前に手のケアも無理なく続けたい。
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乾燥に気づいたら何度でも保湿
本や新聞を読む、パソコンを操作する、髪を整える……。意識してみるといかに多くの物に触れているかに気づいた。既に手には負担をかけており、今まで乾燥に無頓着だっただけなのだ。放っていたら手荒れが進んでいたかも。早速、家事の際に綿の手袋を使い始めた。

ニベア花王の消費者調査では1日の手洗いの回数が新型コロナの流行後、6.4回から8.3回に増えたという。乾燥に気づいたら何度でも保湿することが欠かせない。パーツモデルの金子さんも「いつからでも、ちゃんと手入れをすれば肌は変わる」と力説していた。その言葉を信じ、大事な手をいたわろう。
(関優子)
[NIKKEIプラス1 2020年10月24日付]
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