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カイゼンとテクノロジー

新風シリコンバレー SOZOベンチャーズ創業者 フィル・ウィックハム氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 新風シリコンバレー

シリコンバレーのスタートアップというと日本とは縁遠く、若者ばかりが経営しているイメージを持たれるかもしれない。しかし、シリコンバレーには日本にゆかりを持ち、ベテラン陣が創業したスタートアップもある。製造業の生産性向上を支援するドゥリシティ社はそんな企業だ。

ベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの会長。データ解析やフィンテック、クラウドなどのIT(情報技術)のスタートアップに投資するSOZOベンチャーズを2011年に設立。

創業者のプラサド・アケラ博士はスタンフォード大学で博士号を取得したのち、産業技術総合研究所のフェロープログラムに参加し、2年間茨城県つくば市で研究員を務めた。日本滞在中に彼は様々な日本企業の製造現場を目にし、経営層と現場層の双方のたゆまぬ生産性向上の努力に深く感銘を受けたという。

その後、米ゼネラル・モーターズ(GM)で人と協働するロボットの開発責任者を務めていた。製造業でのテクノロジー活用の可能性は大きいが、ベンチャーキャピタルから投資を受けているのは営業やマーケティングのスタートアップばかりであることに問題意識を感じ、自身で起業したのがドゥリシティ社だ。

アケラ博士は50歳を超えて起業し、彼を支える主要メンバーも製造業や自動車業界で何十年も経験を積んだベテラン陣だ。日本企業を含めた海外企業との事業連携経験も豊富だ。多くの日本企業の方に親近感を覚えていただけるだろう。

同社は工場に置いたカメラで生産ラインの従業員の動作を撮影し、コンピューター・ビジョンでデジタル化する。その後、専用のアルゴリズムで作業ごとにタグ付する。従業員の動きをリアルタイムで解析し、標準プロセスとのズレを可視化し、ボトルネックとなっている工程を検出できる。

省人化を究極の目的とするのではなく、人と機械が協業し、生産性を高めるという点がポイントだ。日本企業ではデンソー日産自動車の北米拠点でドゥリシティ社の技術を活用している。またトヨタ自動車も北米拠点で実証実験中だ。

アケラ博士によれば、日本が誇りにする製造業のプロセスのうち、70%以上がまだ人間の手によって行われている。工場のオートメーション化や第4次産業革命が叫ばれる今もこの状況は変わっていない。ブルッキングス研究所のリポートによれば、日本の製造業が世界シェアに占める割合は10%強で世界第3位だ。シリコンバレーに拠点を構える日本の製造業も日に日に増え、イノベーションに積極的な印象を受ける。

しかし、米国のスタートアップ投資に占める製造業向けテクノロジーの割合は多く見積もっても10%未満で有力スタートアップが限られているのが現状だ。日本の製造業がけん引してきた「カイゼン」の仕組みにはテクノロジーの貢献余地がまだまだある。

SOZOベンチャーズではその点に注目し、ドゥリシティ社に出資しただけでなく、我々のチームからプリンシパルの松田弘貴氏をボード・オブザーバーとして派遣し、日本企業との協業にも力を入れている。ドゥリシティ社は人と機械の融合を進めて、日本の製造業の変革の一助になってくれると期待している。

[日経産業新聞2020年10月20日付]

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