朝井まかて「秘密の花壇」(230)

朝井まかて「秘密の花壇」
2020/10/13付
情報元
日本経済新聞 夕刊
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その他

十章 金糸雀 10

馬琴の書斎は家の北側の四畳半で、続き間の納戸が書物庫だ。三十余年もの間、地獄の釜底かと思うほどの暑さに苦しみながら執筆を続け、ようやく涼やかな場を得た。

金糸雀(カナアリヤ)の籠は納戸に並べ、書斎の窓辺にも吊(つ)るしてある。囀(さえず)りを聞きながら墨を磨(す)り、執筆に倦(う)めば籠を庭に持ち出して洗い、餌を与えてやる。鳥は賢い生きものだ。馬琴をちゃんと判別し、顔を見れば…

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