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プラごみ削減へ投資マネー スタバや花王は容器対応

Earth新潮流 日経ESG編集部 相馬隆宏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Earth新潮流

スターバックスコーヒージャパンは11月から順次、一部のアイスドリンク用のカップをプラスチック製から紙製に切り替える。あわせてストロー無しでも飲めるリッド(蓋)を採用する。

米スターバックスは2年前、世界でプラスチックストローを2020年末までに全廃すると発表し、大きな話題を呼んだ。海洋汚染の原因にもなっているプラスチックごみを削減するのが目的だ。今回、日本で始める取り組みもプラごみ削減の一環となる。

第1段階としてまず約100店舗に新しい紙製カップを導入した後、21年2月に全店へ展開する。これによって年間約6100万杯分のプラスチックカップを削減できる見込みという。

スターバックスコーヒージャパンのサプライチェーン本部資材・店舗開発調達部の古川大輔部長は「若い世代を中心に、サステナビリティ(持続可能性)に取り組む企業から商品を購入したいという意識が年々高まっている」と話す。

世界的な課題になっているプラごみ問題に対する消費者の関心は高まっており、企業にも厳しい目を向ける。対策が遅れている企業は悪い評判が立ちかねないばかりか、最終的に商品を購入してもらえなくなる恐れがある。特に消費者になじみのある商品を販売するブランドオーナーと呼ばれる企業は、その最前線で評判リスクにさらされている。

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1990年代初めから詰め替え商品を販売するなど、早くからプラごみ削減に取り組む花王もここ数年、対策を加速させている。花王のESG部門を統括するデイブ・マンツ執行役員は「消費者がサステナブルな商品を選択する動きが加速すれば、プラスチックを使っていない商品を選んで買うことも十分あり得る。変化に対応しなければ、競争に乗り遅れ、消費者に選ばれなくなるだろう」と危機感を強める。

同社は19年、気候変動の影響を長期で捉えた「シナリオ分析」を実施して、プラスチック包装容器に対する環境施策が最重要の経営課題であることを確認した。

分析の結果、リスクとして浮かび上がってきたのが、石油由来プラスチック製容器への課税や、再生プラスチックの使用義務付けだった。世界で気候変動対策が強化されており、化石燃料の使用量を削減する政策が各国で実施されれば、プラスチックの使用に関わるコスト負担は重荷になる。

こうしたリスクが懸念される一方、プラごみ問題の解決に貢献する革新的な容器を開発することで、商品の売り上げ増や技術ライセンスの提供による収入増といった機会が期待できる。

同社の方針を映すのが、4月に米国で投入した新ブランド「MyKirei by KAO」(マイキレイバイカオウ)だ。新開発の容器は薄いプラスチックフィルムでできており、プラスチック使用量は従来のプラスチックボトル容器と比べて約50%少ない。

米アマゾン・ドット・コムのサイトで限定販売しており、「週を追うごとに売り上げが伸びている」(マンツ執行役員)。購入者の評価でも、約8割が4つ星(満点は5つ星)以上をつけており、プラスチック使用量の少ない容器に好感を示す声は確実にある。

プラごみ問題が重大な経営リスクであるという認識は、投資家の間にも急速に広がっている。企業との対話を通じて対応を求めるだけでなく、取り組みを評価して銘柄を選別し、資金を投じるようになってきた。

世界最大の資産運用会社の米ブラックロックは、リサイクルや代替素材の開発などによりサーキュラーエコノミー(循環経済)の実現に貢献する企業で構成するファンドを新設した。プラごみ問題の解決に関わる企業も組み入れている。

野村証券が8月、このブラックロックのファンドに投資できる個人投資家向けの投資信託「野村ブラックロック循環経済関連株投信(ザ・サーキュラー)」を発売すると、950億円を集めて話題となった。

ザ・サーキュラーを設定した野村アセットマネジメントアドバイザリー運用部の上妻浩シニア・ポートフォリオ・マネージャーは「サーキュラーエコノミーに先行して取り組んだ企業は今後大きな収益を期待できる」と指摘する。

米アクセンチュアによれば、サーキュラーエコノミー関連事業による経済効果は30年に4兆5千億ドル(約470兆円)に拡大するとみられ、投資家の関心も高まっている。

第一生命保険と第一フロンティア生命保険は7月、ドイツの日用品メーカー大手ヘンケルが発行した、資金使途をプラごみ削減に絞った債券を全額(約74億円)購入した。この債券で調達した資金は、リサイクル材を用いたシャンプー・洗剤容器の開発などに充てられる。

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ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の世界的な広がりが、プラごみの削減を後押しするのは確実な情勢だ。裏を返せば、プラごみ問題のリスクと機会を把握せず、対策を講じていない企業は評価を下げることになり、投資家が離れていく可能性がある。

プラごみ問題は、プラスチック包装容器を使用するブランドオーナーだけでなく、プラスチック原料を提供する化学メーカーを含めたバリューチェーン全体に関わってくる話だ。

3R(リデュース、リユース、リサイクル)や代替素材の開発などによって問題の解決に当たることが、企業価値を中長期に高めることになる。

[日経産業新聞2020年10月9日付]

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