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在宅勤務と「生活権」

SmartTimes インディゴブルー会長 柴田励司氏

「在宅勤務は生活権の侵害かも」。親しい経営者から聞いてハッとした。4月の緊急事態宣言に伴い、ほとんどの会社が一斉に在宅勤務を社員に要請した。ただ、在宅勤務が常態化するにつれ、「家は生活するところであって仕事をするところではない」「会社による在宅勤務要請は生活権の侵害ではないか」といった主張が出てきてもおかしくはない。

1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブの最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。

これまで騒音、日照権の侵害、原発事故による避難生活から「生活権」が論じられることがあったが、今後、在宅勤務をめぐり、社会的、文化的、経済的に一定水準の生活をする権利が侵害されたとして訴訟を起こされる可能性があると感じている。在宅勤務は多くの会社員から通勤呪縛を解き放った。これは恩恵と言っていい。そもそも、仕事と生活を対立概念で語ることは問題だが、通勤時間を他に使うことができるようになったのは大きい。これまでできなかった子供の送り迎え、家事などに時間を割けるようになった人は多いはずだ。

今後、コロナが収束したとしても、この新しい働き方を手放したくないと思うのは当然。企業はそれを見越して、生活権侵害で訴えを起こされる前に、リモートワークのための環境、場所を用意すべきだ。家で仕事をしたい人、できる人は構わない。だが、家では仕事をしたくないという人たちのために、これまで通勤先として、当たり前のようにオフィスを用意してきたことと同じく、当たり前にサテライトオフィスを用意することがあってもいいだろう。

すでに先行事例があるが、一案としてビジネスホテルを活用することを提案したい。これまで出張者を受け入れていたビジネスホテルは、今後はサテライトオフィスとして、リモートワーカーを受け入れることになるだろう。企業の担当者は自社の社員の居住地と沿線から適当なビジネスホテルと契約し、社員のリモートワーク環境を整えるべく動いた方がよい。通勤手当の廃止でサテライトオフィスの契約料は一部でも捻出できるはずだ。

他方、行政にお願いしたいことがある。リモートワーカーを時間管理から解放してほしい。現行の高度プロフェッショナル制度の年収基準では適用対象が極めて限定的になる。裁量制と言いながら、職種制限があり、かつ深夜勤務などの時間管理が求められる制度では労使ともに負担だ。改めて、ホワイトカラーエグゼンプション(脱時間管理)の導入を再提案したい。

自分の時間を自分で管理することができてこそ、リモートワークが生きる。住宅事情が悪い中での在宅勤務で、さらに厳格に時間管理までされてしまうと、労働環境としては極めて劣悪。創造的な仕事はできない。コロナ禍を契機に新しい働き方について議論を再開してほしい。

[日経産業新聞2020年10月2日付]

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