動画配信が変える視聴習慣 テレビ使った広告も岐路に
奔流eビジネス (アジャイルメディア・ネットワークアンバサダー 徳力基彦氏)

日経MJ
2020/10/2付
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NIKKEI MJ

米動画配信大手ネットフリックスの日本の有料会員数が8月末時点で500万人を超えた。日本の潜在的な視聴者数を考えると、決して大きな数字とは言えないが、会員の増加率は目を見張る。2019年9月の段階でネットフリックスの国内会員は約300万人だった。それが1年で約500万人になったわけだから、年率で6割を超える驚異的なペースだ。

ネットフリックスの日本での会員数は500万人を超えた=ロイター

ネットフリックスの日本での会員数は500万人を超えた=ロイター

しかも、今年は独自コンテンツの韓国ドラマ「愛の不時着」が日本でもスマッシュヒットした。有料会員しか見られない番組が、ここまで話題になるのは珍しい。地上波のテレビドラマの視聴率を考えると、500万人の会員が全員が同じドラマを見ても、数%にすぎない。それでも、お金を払って面白い映画やドラマを見たいという層が見ているからこそ、影響力を持ち始めている。

今年はTBSのドラマ「半沢直樹」が9話連続で視聴率20%超えを果たし最終話が30%を超えるなど、地上波ドラマにも明るい話題はある。とはいえ、いつでも好きな番組を見られる動画配信サービスに慣れた視聴者が、従来の地上波放送に合わせてテレビを見る習慣に戻るとは考えにくい。動画配信の存在感は高まっていくだろう。

今後注目したいのが、地上波が強い日本ならではの、地上波と動画配信サービスを組み合わせたアプローチだ。9人組ガールズグループの「NiziU(ニジュー)」を生んだ「NiziUプロジェクト」は象徴事例と言える。

このプロジェクトは動画配信サービスの「Hulu(フールー)」の独占配信番組として始まったが、日本のフールー事業を運営している日本テレビが深夜番組や朝の情報番組で大々的に取り上げた。ユーチューブでも配信しフールーの加入者以外の幅広いファンを獲得することに成功した。実はこの地上波と動画配信の組み合わせはリアリティー番組「テラスハウス」でフジテレビとネットフリックスが確立した手法でもある。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

日本はケーブルテレビの普及率が低く、地上波の影響力が強い。今後も動画配信サービスと地上波を組み合わせて幅広い視聴者にアプローチし、動画配信サービスの会員獲得と両立するモデルが増えていくだろう。前述の半沢直樹も9話放送までは見逃し配信ができなかったが、最終話直前になって、民放のテレビ番組をネットで配信する「TVer(ティーバー)」で第1~9話の無料配信を実施。最終話への盛り上がりにつなげた。

こうした視聴環境の変化は、広告市場や企業のマーケティングにも大きな影響を与えることになる。

テレビ広告市場は長らく広告市場のトップを守りつづけてきたが、ついにネット広告市場が規模では上回る状況になった。ところがネットフリックスのような配信サービスには、テレビCMのような広告を掲載する余地がない。

地上波から動画配信に視聴者がシフトしてしまうと、広告主はテレビCMでマスの視聴者に訴えるという手法をとりにくくなる。動画配信サービスの勃興により、企業は新しいマーケティング手法の開発を迫られるだろう。

[日経MJ2020年10月2日付]

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