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買い物アプリで顧客作り

SmartTimes ネットイヤーグループ社長 石黒不二代氏

新型コロナウイルスの感染状況は予断を許さないが、とりあえず、街に人は戻り始めた。緊急事態宣言後の数カ月の間に、新しい生活様式を強いられた人々が、やってみて良かったと感じたものは今後の生活に根づいていくだろう。その一つが、全国で多店舗を展開しているスーパーマーケットやドラッグストアなどの小売店が提供している「買い物アプリ」だ。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

お店の場所を検索できるほか、チラシや特売などのお知らせ、ポイントやクーポンの機能もある。もっとも、コロナ以前からこの買い物アプリは店舗側にとっては頭が痛い。というのも、単なるセールの告知や割引ポイントという短期販促施策だけ打ち出していると、お店側にとっては商品の値引きをしているだけだからだ。値引きによる集客には、継続性もない。ポイントという名前の値引き合戦を繰り広げ、ライバルと一緒に共倒れにならないためにも、新しい施策が求められている。それはリピートカスタマーや値引きだけに左右されないお店を愛してくれる顧客を増やすことだ。

そのためには価格以外の「顧客の成功体験」を作る施策が必要で、マーケティング業界ではこれを「カスタマーサクセス」と呼んでいる。顧客が成功体験を積み重ねれば、そのお店を愛してくれるようになる。これらカスタマーサクセスをアプリの新機能として実装するために、まずはその成功体験のシナリオを策定してみることだ。

例えば、コロナ禍で、来店時に接触を好まない利用者が増えている。その人たちのために、店員と話さず使える非接触型の決済機能やセルフレジ型のサービスを取り入れるのは一つの手だ。自分だけのためにというサービスがあれば、利用者は喜ぶに違いない。例えば銀座店の近くに頻繁に訪れているが銀座店で買い物をしたことがないアプリ利用者がいたら、利用者が銀座店の半径100メートル以内に入ったときに、銀座店だけの本日限定のクーポンのプッシュ通知を出す。

いざ来店して利用者が迷うのが商品の位置。欲しい商品を探す手間を省くために、商品の名前を入力したらどこにあるかを教えてくれる機能があったら快適だ。普段からお店を利用してくれている利用者のためには、自分へのご褒美クーポンもよい。そのためには、既存の顧客データベースの分析が必要で、性別や会社員か自営業の区別がわかれば、クーポンの中身も変えられるだろう。アパレルの小売店舗で買い物をした顧客に購入後にコーディネート例を配信することもできる。

カスタマーサクセスへの取り組みが単なるポイントと異なるところは、それぞれの顧客を知っているからこそ可能になる点だ。人間関係と同じで顧客を知ることが成功体験を作り、それがリピートカスタマーを増やすことにつながる。

[日経産業新聞2020年9月30日付]

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