「すべての人」輝く公益性を
SmartTimes 公益資本主義推進協議会副会長 田中勇一氏

2020/9/28付
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「すべての人が輝けるようにするには?」。せいふうケア(福島県郡山市)代表取締役社長の太田大さんは、社員にそう問いかけながらデイサービス事業を展開している。「すべての人」とは、顧客である高齢者や障害者、その家族に限らず、従業員や取引先、地域社会も対象としている。太田さんは多くの経営者と出会う中で、羽振りが良さそうにみえても数年で業績が悪化し一線を退いた人たちを大勢見てきたとのこと。会社に関わるすべての人を幸せにすることこそ、持続可能な経営を実現する道であると気づいたのだ。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

専門学校で柔道整復師と鍼灸師の資格を取得し整骨院を開業した。その後、2000年からスタートする介護保険制度に関する情報を収集する中で、高齢者、特に要介護高齢者が運動する場が全国的に少ないことを知る。

そこで業態転換を図り、01年より機能訓練重視型のデイサービスを開業。03年には、リハビリや運動を主目的に通える短時間制のデイサービスを開始し、より機能訓練に重きをおいた事業スタイルを確立した。昨今の介護業界で、柔道整復師や鍼灸師が働くことは珍しくないが、開業当初は先輩から「治療家が介護なんかするなんて」とたしなめられたという。

19年には障害児の保育事業をスタート。きっかけは会社を寿退社した従業員からの電話だった。障害のある子どもの預け先がなく、働きたくても働けないという切実な内容だった。障害児向けのサービスなど一切経験がなかったが、何とかしてあげたいという思いが勝った。市や社会福祉協議会に相談してみたところ、多くの賛同が集まった。

地域において障害児を保育する施設のニーズは高いが、職員確保が難しく開所にはまず至らない。一般の保育所さえ職員がなかなか集まらないのが現状だ。太田さんや集まった仲間たちは、それでも諦めずにノウハウやアイデアを共有し何度も議論を重ねる中、「保育所の全職員が、障害のある子どものお母さん」という新しい雇用条件を思いつく。子どもを施設に預けても保育料は自治体が補助してくれる。それなら職員も確保でき保育所を立ち上げられるかもしれない。

まずもってそういう施設を開設することが重要なのだ。思いは通じた。この条件で4人の母親が集まり開業にこぎ着けることができた。全職員が当事者でもあることから、障害児の保育にやりがいを持てる。さらに、同じ境遇だから悩み事も相談しやすく風通しのよい一体感が醸成されるようになった。利益をステークホルダー全体に還元しようとする公益資本主義の考え方に沿った経営を実践し、すべての人が輝けるように願う太田さんの更なる活躍に期待したい。そして、この事業スキームが多くの地域で普及することを願ってやまない。

[日経産業新聞2020年9月28日付]

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